練習終了後、同棲している彼女の真結が待つタワーマンションに帰ろうとした頃。
そのマンションの管理人・御影玲王から、俺の携帯に連絡が入った。
『おい、潔。大変だ……!』
曰く、俺の敬愛するノエル・ノア引退後、バスタード・ミュンヘンのエースになったという選手――ミヒャエル・カイザーのSNSアカウントにてアップされた動画に、真結が映っていたらしい。
彼女は俺のストーカーである女への恐怖で部屋の中に引きこもっているはずなのだが、一体どういう手を使って外へと引きずり出したのだろうか――厳重なはずのタワーマンションのセキュリティを破った手口がなんであれ、今確認しなければならないのは彼女の無事だ。
「玲王か、どうした?」
『ミヒャエル・カイザーのSNSのアカウントは見たか?リプライ用のやつ……そこに映ってるんだよ、お前の彼女さんが』
「……は?どういうことだよそれ、ちょっと確認するわ」
俺はSNSにて3つのアカウント――日本代表の選手・潔世一としてのアカウント、リプライ用のアカウント、仲間にしか教えていない鍵アカウントを運用しているのだが、そのいずれでもカイザーのアカウントは選手としてのものはもちろん鍵のついていないリプライ用のものもブロックしていたため、カイザーのツイートがタイムラインにのぼってくることはなかった。けれど幸いというべきか、あちら側は俺に対して自分を見せつけたいあまり俺をブロックすることはなかったようである。
検索して出てきたアカウントのうち、真結が映っているというリプライ用の方をクリックする。丸い枠の中で不敵に笑う、相変わらず俺を苛つかせる風体をした金髪の男――その姿に青筋を立てつつ画面をなぞると、2分くらいの動画が何本か流れてきた。
とりあえず最新のツイートとして一番上にあがっている、彼女の下着姿が映った動画をクリックする。
『おい、見てるか世一ィ〜?こいつがお前の彼女なんだって?』
『や……っ、よいちゃ、よいちゃんの話するからって……っ、』
『「よいちゃん」だって。可愛いなぁ……それを今すぐにでも「ミヒャ」に変えてやりたいぜ。なあ?』
『ね。まだ籍入れてないみたいですし、今のうちに別れさせなきゃ……あ、潔選手♡見てますか?私です!』
真結にぐっと顔を寄せ言葉でなぶるのは、傲慢不遜で挑発的な――最終選考当時から何も変わっていない、薔薇のタトゥーのあの男。そして時折映る、彼女ではない別の女――あれは間違いなく、俺のストーカー女だ。
日本代表としての試合の俺の活躍を見て撃ち抜かれたらしいあの女は最初は日本代表宛にプレゼントや差し入れを送ってきたけれど、住所を突き止められてからは俺宛に直接それらを送ってきた。住所を突き止められる前はすぐに日本代表のスタッフが捨てていたらしく俺には届いてきた事実しか伝わらなかったからなんともなかったものの、あのタワーマンション近くに張り込まれてしまってからが酷かった。一度は俺の好きなCMのマスコットが送りつけられたもののそれだって盗聴器が仕込まれていたのを発見して以来即切り取って壊して捨てたし、それ以降はあの女から贈られたものはすぐにポストから受け取った時点で捨てている。それを知ってか知らずか、あの女の使用済みの生理ナプキンやらあの女の体液がついたバイブレーターやら、最近ではあの女の裸の写真やらまで送られるようになってきて――高級プリンを奢るのを引き換えに、中身を開けないまま馬狼に処理してもらったことも数えきれない。
『もう、潔選手が悪いんですよ?私があれだけ潔選手のポストに手紙入れたりプレゼントを送ったりしても、全然私の想いを受け止めてくれないでしょう?潔選手ははちみつきんかんのど飴の歌が好きだっていうから、それのマスコットのぬいぐるみも送ったのに……!』
『ぁ、あ……たすけて、よいちゃ、』
『本当は日本代表の建物にも行こうとしたけれど、警備員に止められちゃったし……だから、ちょっと協力してもらっちゃった』
『こいつも単純だな、ネスが世一の話がしたいって言ったらす〜ぐドアを開けたんだぜ?お前は結局、クソ哀れな道化師だったって事だよ』
普段から俺のマンションを監視していたストーカー女は今日俺が家を空けているのを知り、それならばと俺を追って日本代表の建物に突撃し警備員に止められたところ、そこで俺を訪ねてきたカイザーと出会ったらしい。俺を困らせたいカイザーと、俺と付き合いたいストーカー女――利害の一致した2人はネスに彼女をさらわせ、そのままカイザーに寝取らせてスキャンダルを作り俺と別れさせる作戦に出たというわけだ。
そういえば、真結に俺が出ている試合を見たいとせがまれることは何度かあった。しかし俺以外の男を彼女の視界に入れたくなかった俺は、ブルーロック時代の仲間達と行ったカラオケで潔ならぬうさぎ世一とか言ってバニーボーイの格好をさせられた写真を見せこそすれ、試合だけは絶対に見せようとしなかったが――ネスはそれを利用して、俺の元チームメイトだから俺の話がしたいと鍵を開けさせたらしい。カイザーやネスが俺のチームメイトだったときなんて、新英雄大戦が終わるまでの期間だけなのに。
「……っ、」
俺以外の誰かに――ましてやカイザーに抱かれる真結の姿なんて、想像したくもなかったのに。
――ああ、腹立たしくてしょうがない。
カイザーに捕まり泣きじゃくる彼女を画面越しに見て、怒りと殺意が湧き上がる。
「……悪い、玲王。あっちに警察呼んでくれ」
『決まってんだろ?もう呼んだ。でもお前は行かない方が、』
「いいや、行く。真結のこと安心させてやれねえで、何が未来の旦那だよ」
連絡を終えて、タクシーを呼び――そしてそのままカイザー達のいるというホテルへとタクシーを向かわせた。タクシーの料金が何円になるかとか、俺が行ったらあいつらの思う壺だとか、今はいちいち気にしていられなかった。
このまま真結が犯されるのを黙って見ている趣味はないし、ここで警察に任せて放っておいたら俺は一生自分を許せないだろう――そう、ゴール前で多田ちゃんにパスを出してしまい全国大会への道を絶たれてしまったあの頃のように。
真結は俺だけのものだし、俺は彼女だけのものだ。
だから――絶対に、あのクソ皇帝の手から奪い返してやる。
***
ホテルに駆けつけた頃にはすっかり行為が進んでしまったようで、カイザーの腕の中で全裸の真結が大きく足を開かされながら涙目になって喘いでいた。側には明らかに御影製ではない媚薬の瓶が転がっていて、彼女がそれを飲まされたのだということがよく分かる。
幸いまだ手遅れではなかったようで、彼女の膣内からはまだ精液が流れ出てきていない。けれどそれも時間の問題かもしれないし、これ以上好き勝手をさせる気はなかった。
「あ〜……こんなに魅力的ならネスを使うんじゃなくて、俺がさらってそのまま車で犯しときゃよかったぜ」
「んぅっ♡あ、あぁっ、よいちゃ……っ、」
「おい、俺の彼女から離れろ……っ!」
「あ、よい……ちゃ……?♡」
まずはカイザーから真結を引き離して、その辺にあったバスローブを着せる。それから撮影担当をしているらしいネスをぶん殴ってスマホを奪い取り、それを床に叩きつけた。日本代表の選手に――それも現時点でのエースストライカーにあるまじき言動だと自分でも思うが、これで動画を撮られることはないだろう。
さて、あとは向こう側で挑発的な笑みを浮かべているカイザーをどうするか、だ。もしカイザーがそのままさらいに行っていたら真結とカーセックスするつもりだったと聞いて、どれだけ頭がハイなのかと呆れてしまうくらいだ。お前なんて、英語にしたらマイケル・エンペラーのくせに。
「ごめんな、遅くなって。もう大丈夫だからな……よう、ミヒャエル・カイザー」
「あ〜……やっぱり来たかよ、世一ィ」
「当たり前だ。言ったろ?お前だけは100%殺すって」
「へえ?言うようになったじゃん。けど残念、今回は俺1人じゃないんだよ」
余裕たっぷりに笑って、カイザーは背後に控えていた女――俺のストーカー女を指差す。女は俺の姿を目にすると、嬉しそうな顔をして俺に抱きついてきた。
柔らかくて大きな――しかし真結と違ってなんの魅力も感じられない胸が、俺の身体に押しつけられる。
「潔選手!やっと来てくれたんですね……私、嬉しい……♡」
「お、お前は…………!お前、自分が何してるか分かってるのか、」
「もちろんです。私は貴方が好きで好きでたまらないんです、潔選手に愛されるために産まれてきたのは彼女さんじゃなくてこの私なんです。だから、潔選手にも――これ。飲んでもらいますね?」
女は手元にある――おそらく真結に飲ませたものと同じであろう媚薬を、躊躇うことなく口に含んだ。そのまま飲み干すかと思ったが、なんとあの女はそのまま口を塞いできたのだ。
おそらく俺に口移しさせようとしているのだろう、女の舌が俺の唇をこじ開けようとしてくる。そのまま蹴り飛ばそうとするけれど、女は俺の脚にしがみついて離れず――ついに、口の中に液体が流し込まれてしまった。
抵抗する間もなく、喉の奥に流れていく媚薬。
「な、んだ……これ……っ、」
「ねえ潔選手、はやく……♡」
身体が熱くなる。息が苦しくて、頭までくらくらして、元々フィジカルがそこまで強くない俺は立っているのも難しい。
――これが、さっき真結が飲まされたというやつか。
この熱を早くどうにかしてしまいたいけれど、彼女以外に触れる気はなくて。そんな暇があるのなら、カイザー達に汚された彼女を今すぐにでも俺の手で綺麗にしてやりたくて。
彼女の身体を抱き抱え、バスルームへと向かった。
「……っ、」
「よい、ちゃ……?♡」
「なんでよ……なんで、こうなるのよ……!私が襲われるはずだったのに……!」
想定外の事態に困惑する女がヒステリックに叫ぶも、その声は俺の耳に全く届くわけがなく。
俺は、ただ目の前の真結のことしか考えられなくなっていた。
*
服を脱いで風呂場に入り、真結を洗面台の前に座らせる。そして、そのままシャワーのノズルを回した。
もちろん鍵はかけてあるから、カイザーもストーカー女も入っては来られないだろう。
「……っ、冷たぁ……っ♡」
媚薬の効果なのか、元々そういう温度設定だったのか、家で浴びているものよりも少し冷たく感じるシャワー。真結も同じだったようで、彼女は俺の腕の中で身を捩らせた。
しかし俺は構わずに真結の背中にシャワーを当てたあと、ボディーソープを手に取り彼女の肌に塗りつけて洗い始めた。いっそ彼女にも俺の身体を洗ってもらえばよかったのだろうけれど、まずはカイザー達の手垢がついた身体を清めるのが先だ。
「やぁ……っ!?よいちゃん、それ、だめ……っ!♡」
「ごめんな。気持ち悪く感じるかもしれないけど、我慢してくれな」
「ぁ、う……くすぐっ、た……っんん、♡」
泡立てた石鹸まみれの両手で、円を描くように胸元から下腹部にかけて撫で回すと、それだけで気持ちいいらしく真結の腰が揺れ始める。媚薬のせいでいつもより敏感になっているのか、それとも俺に触られているというだけで感じてしまうのか――おそらく後者だと思うと嬉しくなった。
――全部、俺のせいなんだ。
俺がもっと早く駆けつけていれば、こんなことにはならなかったのに。真結の身体も心も全部俺のものなのに、どうして俺は彼女を守れなかったのだろうか。
「ごめんな、俺が見てなかったせいでこんなことに……!」
「あぅ……♡んっ、よいちゃ……あ、んぅっ♡」
首筋から肩、鎖骨、それから胸に、太ももと足先。足の指の間も、土踏まずも、ふくらはぎも膝裏も、それから内腿も――余すところなく、丁寧に洗っていく。
媚薬が効いているのか真結はどこに触れても甘い声で鳴いて、身体を震わせながらとろんとした瞳を向けてきた。
「ね、よいちゃ……っ♡」
「……なに?」
「さわって、よいちゃ……きれいきれいして……?♡」
「ああ。今すぐに、綺麗にしてやるから」
甘えるような口調でそう言って、自ら脚を開く真結。
どうやら、媚薬のせいで理性がほとんど飛んでいるらしく、秘部が丸見えになる体勢に恥ずかしがることもせずむしろ俺に見せつけるかのようにそこを広げていた。くぱくぱと物欲しげに収縮を繰り返すナカからは絶えず蜜が流れ出てきて、まるで俺の指を誘うかのように溢れ出している。
このまま挿れたい気持ちを抑えつつシャワーを止め、代わりに指を2本挿入する。中はもうどろどろに蕩けていて、動かす度にぐちゅりと卑猥な音が響いた。
「あ、ふ……っ、んう、よいちゃ……きもちい、よぉ……っ!♡」
「可愛いな。ここ、好きだもんな?カイザーは、ここは触れてくれなかったんだろ?……まあ、もう二度と触れさせねえけど」
「うん……すき……っ、あ、あ♡そこ、もっとぐりゅってして……っ♡」
念入りに隅々まで指先でなぞり、汚れを全てかき出すようにして出し入れする。膣内のざらついた部分を擦ると、真結は腰を大きく跳ねさせた。
彼女の好きな場所なんて知り尽くしているし、それこそカイザーが知らないであろう性感帯だって全て把握している。だから俺は、彼女がもっともっと乱れてくれるよう必死に指を動かした。
「あ、あ、あ……っ♡はげし……っ♡やぁ……っ♡」
浴室に響く真結の喘ぎ声を聞きながら、俺は彼女の身体中にキスマークをつけていく。彼女は俺のものだと示すために、何度も強く吸い付いて痕を残していった。
真結は俺の――俺だけのものだ。
他の誰かには、絶対に渡さない。例え相手が誰であろうと、真結だけは譲れない。それがどんなに醜くて汚らしい感情かは充分に自覚しているけれど、俺はそれでも構わなかった。
玲王が凪を宝物と称するのと同じで、俺にとっては彼女こそが宝物だったのだ。
「あ、あっ!あ、イっちゃ……!っ〜!♡♡」
一際大きく痙攣したあと、真結は俺にしがみつきながら絶頂を迎えた。荒くなった息を整えようと深呼吸する彼女だったが、まだ媚薬の効果が切れていないのか、それとも俺に愛され続けているからなのか、またすぐ快楽を求め始めて。
そんな真結を見つめていると、俺自身も我慢の限界に達してしまった。
「ねえ、よいちゃん……はやく、きて……♡」
「……っ、おま……!」
真結の身体を持ち上げ、向かい合った状態で俺の上に座らせ――そしてそのまま、一気に奥深くまで貫いた。
本来はゴムをつけてするべき行為だったけれど、それはあとで玲王に連絡してアフターピルを届けて貰えばいいだけの話だ。それに、何より今は俺以外の男に汚された彼女の身体を綺麗にしてやりたかった。
「あ……♡あっ、あ……♡よいちゃ、あ、ああっ♡」
「っ、あー……すっご……♡なあ、カイザーにはこんなことさせてねえよな?」
「んっ、ないっ、あ……♡よいちゃんだけ、だよぉ……!♡」
「そうだよな、間に合うように来たんだから」
下から突き上げるように激しくピストンを繰り返し、真結の身体ごと揺さぶる。その度に彼女は大きな声で鳴いて、俺の背中に爪を立ててきた。
――ああ、本当に可愛くて堪らない。
俺だけが知っている、俺にしか見せない、俺しか触れることのできない表情。
他の誰にも見せたくない、触らせたくもない身体。
ずっと、俺だけを見ていてほしい。
玲王に頼んで、タワマンの警備をもっと厳重にしてもらおうか。そうすれば真結も安心してくれるだろうし、今回みたいに練習中や試合中にストーカー女が襲ってくることもなくなるはずだ。
「んぅ……♡はぁ……っ、ん、ん……っ♡」
「は……っ、ん……」
どちらともなく唇を重ね、舌を絡ませる。唾液を交換しながら夢中で口づけを交わして、その間も腰の動きは止めずにいると、やがて真結が限界を訴え始めた。
ああ、俺もそろそろだ。そろそろ、一緒に果てたい。
真結をぎゅっと抱きしめ、耳元で囁いた。
「真結、出すぞ……全部、受け止めてくれ……っ!」
「ん……っ♡だして、よいちゃ……♡あ、あ、あ……っ!♡」
「っく、う……っ、」
どくん、と脈打つのと同時に、俺は真結のナカに欲望を放った。
そのまま急いで引き抜き彼女の身体をバスマットへと寝かせると、今度は正常位で挿入していく。先程よりもさらに滑りがよくなったそこは簡単に飲み込んでいって、俺はすぐに律動を開始した。
どうせこのあと全てシャワーで洗い流してしまうのだと思え、今どれだけ汗をかいても大差はないだろうし、精液だって沢山かけてやりたい。流石に真結を子供に取られることなど考えたくはないので、孕ませるつもりは到底ないけれど――それでも、ナカに注ぐ勢いは止まらなかった。
***
結局、カイザーもストーカー女も去ったあとの部屋にそのまま俺と真結で泊まる形になった。彼女を奪われかけたのはストーカー共々到底許せないけれど、前払いだったらしいこのホテルの宿泊代を勢い任せで出してくれたことだけは感謝している。
すでに眠りについた真結の身体を洗いベッドまで運んでから、備え付けのバスタオルで身体を拭き髪も乾かしてやる。
「ん……よいちゃぁ……」
まだ意識が眠りの中なのか、むにゃむにゃと何かを言いながら甘えるような仕草をする真結。そんな彼女に苦笑しつつ、隣に潜り込み優しく頭を撫でてやった。目が覚めた頃には、先程までの出来事などすっかり忘れてしまっているのだろう。
それでいい、何も思い出さなくていいんだ。だって、真結は永遠に俺だけのものなのだから。
「おやすみ、俺だけの真結」
――ああ。
彼女が眠りから覚める前に、タクシーで2人の部屋があるマンションに運んでしまおうか。いや、せっかくだからカイザーが金だけ払ってくれたこのホテルで一晩過ごすのもいいかもしれない。
なんてことを考えながら、俺もまたゆっくりと目を閉じた。 2023.08.13