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念願のワールドカップ優勝を果たし、小さい頃からの夢だった『世界一のストライカー』の座を手に入れた俺。夢を叶えてしまった今はもう選手であり続ける理由はなかったし、何より現役時代から俺を――引退して既婚者になったにも関わらずまだ『潔選手』の影を追い続けているストーカーを諦めさせたかった。だから俺を『次世代のモドリッチ』と散々持て囃した周りの意向に反するように現役を引退し、ずっと付き合っていた彼女――真結と籍を入れた。
とはいえ、式はまだ挙げていない。現在玲王の伝手で住んでいるタワーマンションのレストランに家族だけを呼びレストランウェディングをしてもよかったのだけれど、警備が頑丈とはいえ特定されてはストーカーにウェディングドレス姿で突撃される恐れがある――そうなれば、参列者側にも迷惑をかけてしまうだろう。席を立って会計をすれば済むような2人のディナーとはわけが違うのだ。そして何より、誰にも真結のドレス姿を見せたくなかった。
代わりに、アパレルブランドを始めた雪宮に紹介されたメーカーでオーダーメイドのドレスを発注した。完成したときに一度この服でウェディングフォトを撮ってそのままだったそれは造花が添えられた揃いの衣装で、俺が青いベストの白タキシード、真結はペールブルーのウェディングドレスだ。

「真結、綺麗だよ。すげえ似合う」
「ありがと、よいちゃん」

ところどころにライトグリーンの差し色が入った、ふわっとしたスカートのウェディングドレス。揃いのペールブルーの薔薇の造花で飾られたヴェール。レースアップされたストッキングと、それを留めるガーターベルト。
――ああ。やはり、オーダーメイドで作らせて間違いはなかった。
俺が着せたこれを、最終的には俺が脱がすことになるのだが――今はこのまま、永遠に眺めていたいくらいに美しかった。
誰も入場させるわけがないし、誓う神などいない。だから、始めるなら指輪の交換からが相応しいだろう――と、ベッドサイドからリングピローを取り上げ、俺と真結の間に置いた。

「真結、手。出して」

彼女の小さな手を取り、左手を掬うように持ち上げ――イエローグリーンの石が嵌められた揃いの指輪を、ゆっくりと薬指へ通していく。サイズを定期的に測っていたのが幸いしたのかぴったりと収まったそれは、まるで最初からそこにあったかのように馴染んで見えた。
さて、次は彼女が俺に指輪をつける番だ。俺はあることを考えつき、彼女に微笑みかける。

「なあ、真結。指輪、口に咥えてくれないか?」
「んー……?」
「飲み込まないように、気をつけてな。ほら」

意図を理解してくれたらしい真結は言われた通りに口を半開きにし、俺はその唇に指輪を咥えさせた。そのまま左手を差し出せば、ぎこちないながらも薬指に指輪を通してくれる。指輪が少し彼女の唾液で濡れたのを見て、口元が緩むのを感じた。
ああ、艶めかしいな。今すぐ、ここで抱いてしまいたい――そんな衝動を抑えながら、髪飾りを避けて頭をよしよしと撫でてやる。

「ん、よくできました。いい子だな、真結は」
「もう、よいちゃんってば、」
「可愛いよ、真結。すごく綺麗だ」

そして、ヴェール越しの額に両手で触れ――そのままそれを捲り上げ、唇を重ねた。
触れるだけのキスを何度も繰り返したのち、薄く開いたままの隙間から舌を割り込ませていく。くちゅりと音を立てて絡ませ合ったそれは熱くて柔らかく、脳髄まで蕩けそうだった。

「ん……んん、ぅ……♡」
「真結……っ、」
「ぁ……は、ふ……♡」

角度を変えつつ深いものへと変えていけば、苦しくなったのか真結は俺のベストを掴む手に力を込めた。それでも離してやらずにさらに貪れば、やがて彼女もそれに応えてくれるようになる。そしてそれに合わせて、俺も彼女の腰を抱いて身体を密着させていった。
もっと深く、真結と繋がりたい。そんな欲求が沸き上がり、呼吸さえも奪っていくほどに彼女を味わい尽くしてしまえば――彼女はとうとう耐えられなくなったようで、胸を押し返してきた。

「は、ふ……はぁ、は……よいちゃ、くるし、ぃ……♡」

名残惜しいと思いつつも離れれば、銀の糸がつぷっと途切れる。息を乱しながら瞳を潤ませる真結はあまりにも可愛らしく、そして官能的だった。
ああ――本当に、このままずっと閉じ込めておきたい。
誰にも見せたくない。誰にも触らせたくない。誰にも渡したくなんかない。誰にも――俺以外の男には、絶対に。

「苦しかったか?ごめんな……でも、気持ちよかったろ?」
「っ、うん……ね、もういっかいして……?」

俺の問いにこくりと小さく首を縦に振った真結に再度顔を近づければ、今度は彼女も自ら唇を開いて受け入れてくれた。そして、再び夢中になって口づけを交わしているうちに――
気づけば、ドレス姿のままベッドの上に押し倒していた。

***

「ぁ、あ……っ、よい、ちゃ……♡」

ドレスの裾を捲り、剥き出しの左太腿に巻かれたガーターリングを口で咥える。そのままゆっくりと焦らすように引き下ろしてやると、脱がせるときに肌に触れてしまうのが心地良いのかぴくぴくと脚を動かしている。
――ああ、堪らなく扇情的な光景だ。
俺だけが見れる、俺にしか見られない花嫁姿。
通例ならこのままそのガーターリングを未婚の男性に向けて投げるらしいけれど、他の男などここに呼ぶはずがない。とりあえず、このガーターリングはベッドサイドに置いておいた。

「よいちゃん、あの、これ……恥ずかしいよ……っ♡」
「大丈夫だよ。俺しか見てないんだから……ほら、動くなって」

そのままストッキングを脱がされる感覚にもどかしさを感じているのだろう、身を捩る真結を宥めつつ可愛がってやる。俺しか見ていないのも、俺以外にこんな姿を見せるつもりはないのも本当だ。
真っ白なシーツに散らばる髪、純潔の象徴たるヴェール、レースアップされたストッキング――そして何より、ウェディングドレスに包まれた彼女の肢体。その全てが美しくて、愛おしくて仕方がない。
箱庭に咲くこの美しい花を俺で満たしたいという衝動に駆られた俺はストッキングを全て脱がせてやったところでまだ触れられてもいないのに反応してしまっているそこのすぐ近く、先程までつけていたガーターリングの痕がうっすらと残っている太ももに口付けた。

「ひゃ……っ、ぁ♡」
「真結、やっぱすごく可愛い……」
「ぁ……っぁ、よいちゃ……だめ、だから……っ、んん♡」

ぢゅ、と音を立てて痕をつけてから、ゆっくりと舌を這わせて舐め上げる。それを繰り返しながら秘部へ辿りつけばそこはすっかりどろどろに蕩けていて、軽く指先で触れただけでも粘着質な水音が響くほどだ。
そのままショーツを脱がし右手の指を沈めていけば、きゅうっと締め付けてくる内壁。堪らず指を二本三本と増やしていき、やがて奥のざらついた部分を擦ってやれば、彼女は一際大きな声で喘いだ。

「あ、あっ、ぅ……♡そこ、きもちい、よ……♡」

びくん、と身体をしならせて悦ぶ真結の姿に、ぞくりと背筋が粟立つ。
――ああ、もっと。
もっと乱れた姿が見たくて、指の動きをさらに速めてやる。そのまま絶頂へと導くために弱いところばかりを攻め立てれば、彼女は呆気なく達してしまった。

「や、ぁ……いっちゃ……〜〜〜っ!♡♡」
「真結、イっちゃった?」
「ん……きもち、よかったぁ……♡」

そう言って、ふわりとした笑みを浮かべる真結。その表情はあまりに幸せそうで、見ているだけでこちらまで嬉しくなってしまう。
ああ、可愛い。どうしようもなく綺麗で、ずっとこのままこの姿を目に焼き付けておきたくて、しかし同時に堪らなく汚してしまいたくて。相反する感情で頭がおかしくなりそうだ。
――もう、我慢できない。
そう思ったときには既にタキシードの前を寛げ、既に熱を持った芯を外気に晒していた。そして、真結の膝裏を抱え上げ――ぐっと腰を押し付け、一気に貫いてやる。

「ぁ、あ……よいちゃ、いきなりは……〜〜〜っ!?♡♡」
「よしよし……大丈夫だから、力抜いてな……?」

いきなりの質量に驚いているのか、真結は目を見開いて背中を仰け反らせた。
そんな彼女の頭を宥めるように撫でながら、ゆっくりと抽挿を始める。最初は馴染ませるように浅く動かしていたもののすぐに物足りなくなってきて、やがて根元近くまで埋め込んだところで腰を掴み直し、激しく打ち付けた。
タキシードのベストにしがみついて必死に耐えようとする彼女の両手を掬い上げ、指輪をしたまま両手を恋人繋ぎにして。真結が安心したようにぎゅっと握り返してくれるものだから、俺はそれに応えるように彼女の身体を揺さぶり続けた。

「ぁ、あっ、は……っ♡よいちゃ、すき……だいす、き……っ♡」
「うん、俺もだよ、真結……俺の、俺だけの花嫁……!」
「は、あ……っ、よい、ちゃ……いっちゃうから、ああぁっ……!♡」
「っ……俺も、そろそろ……っ!」

やがて限界を迎え、俺は真結の中に欲を注ぎ込んだ。それと同時に彼女も果てたようで、がくがくと全身を痙攣させる。
荒くなった呼吸を整えつつ汗で張り付いた髪を避けてやると、彼女はふにゃりと微笑んでくれた。
ああ、もう一生離さない。俺だけの花嫁。 2023.08.13