爪立ちヒーロー、成長中

俺には、年上の彼女がいる。
それを第8の皆に伝えた時、騎士王より先にあんな綺麗な彼女ができるなんてとアーサーに睨まれたのは忘れもしない。

今日も俺は彼女――**先輩との待ち合わせ場所に行く。

「森羅くん、また無茶したでしょ……」
「そんな……」
「あんまり怪我しないでよ?」

――ああ……またやっちまったよ、俺。
先輩に心配をかけるなんて、ヒーロー失格だ……!

彼女に心配をかけている自分が嫌になる。
そんな俺の頭をぽんぽんと撫でる彼女の掌は、意気消沈している俺の心までも優しく包んでくれた。

「ほら、ラーメンでも食べて元気出そ?奢るからさ!」

俺の手を引いて、好物であるラーメンの店へと連れて行こうとする先輩。
心配してくれるのも励ましてくれるのも、俺のことを想っているが故であることは充分解っているし、その想いはとても嬉しい。
けれど――励まされている身でありながら、どこか引っかかってしまうのだ。

――彼女が俺に向けているのは、愛ではなく母性なのではないか。
――彼女にとって、俺はただの「自分を慕う子供」に過ぎないのではないか。

そうか。
どこかで引っかかっていた俺に対する甘やかしとも言える行動も、子供扱いされているからだと考えると合点がいく。

「……」
「ん、どしたの?」

確かに俺は母親もいないし、弟も向こう側に行ってしまった。
母性を求めていないというわけではないが、だからといって**先輩に子供扱いされるのは少々違う気がしてしまうのだ。
俺だってたまには先輩に奢ってあげたいし、励ましてあげたい。任務で傷ついたら、心配だってする。

「先輩……そんなに、甘やかさないでください」
「……えっ?」

だから、あえてその手を振り解いた。

「もう、子供じゃないですから……!」

目の前の彼女は、しばらく面食らっていた。
俺にこういう反応をされるとは思ってなかったのだろう。

何分くらいか経った後に彼女はようやくその言葉を理解できたのか、やっと返事を返してくれた。

「……ごめん、甘やかしてるように思えちゃった……かな」
「こちらこそすみません。せっかくのご厚意だったのに……でも、毎回俺ばっか優しくしてもらうのはちょっと違うよなーって」

謝りつつも、苦笑いしながらの弁明をする。
俺の方を真っ直ぐに見つめながらそれを聞いてくれる彼女は、 今までよりも母性が薄れているように感じた。

「で、結局ラーメン行くの?」
「行かせてください、俺の奢りで!」

先程彼女が俺にしたように、今度は俺が**先輩の手を引く。
彼女がくれた分だけの優しさを返せるような、そんなヒーローになるために。