4.エンカウント
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私がマントにくるまって錯乱に陥っている間に、扉が開きぞろぞろとやってきたのは、クラシックタイプのメイド服の人達だ。しかも全員、顔立ちやら仕草が同じだ。
いやいや、ちょ、まって?さっきの黒騎士風のエルフどうしたよ?!服持ってくるって言ってたよね!?

「えっ?えっ?なに?」

無表情のメイドに囲まれて素っ頓狂な声を上げる。メイド達はそれに構う様子はなく、私を一斉に持ち上げて部屋の外に連れ出すと迷路のような廊下を移動し、その後丁寧に風呂やら着付けやらされていた。
お湯からあがると、すぐにふんわりと暖かい風に包まれて、さっぱり乾いていた。
私の腰のあたりまである髪も同様に乾いているのだが、元々肩より上で切っていた私には違和感しかない。ストレートだけど、腰まであるとか、めちゃくちゃ邪魔ですよ。小学校あたりロングヘアーしてたから、なかなか乾かないし、学校の椅子には木とパイプの間やら木が剥げたところに引っ掛かるし、背もたれに凭れたら頭引っ張られてる感覚あるし…。
首輪も邪魔だけど、メイドさんも外そうとしていたけど外れずにいるので、多分呪いの装備なんだと思う。
途中、無言のメイド達に、着替えぐらい1人で出来ると言いつのっても、動きを止めることなく着替えさせられた。
メイドさんは強い。
最初の部屋に用意された玉座のような椅子に座らせられると、メイド達はそのまま部屋を出ていってしまった。
残された私はというと、嵐が去った気分である。

それにしても、現実味ある夢だ。
エンパイアスタイルのワンピースの生地は滑らかで、手触りがいい。
昔、プレイしたRPGを思い出す。かなりハマったゲームは、ポリゴンのカクカクしたキャラクターで、まだまだ主人公といえば男キャラばかりだった時に珍しく女主人公でスイって自分の名前をつけて遊んだっけ。
男主人公の時も、自分の名前を文字ってケイってつけてたけどね。
あの頃のゲームがリメイクされたら、こんな感じのフィールドとかなんだろうなと、椅子を立ち上がりうろうろと壁際を歩いて装飾を眺めしみじみと懐かしむ。
起きたら、久し振りにレトロゲー配信リストにどれかはあるはずだし、ダウンロードしてゲームしよう。数年の社畜状態に、ゲームする気持ちも吹っ飛んでたから丁度いい機会だ。

ガチャ…扉が開く音に、ゲームに馳せていた思考を目の前に戻す。黒い獣が顔を覗かせていた。先程の獣と違い、子犬で頭が1つのようだ。どこか不安そうにこちらを窺っているので、特に思案することもなく手招きする。手持ちぶさたなので、子犬と戯れていよう。
駆け寄ってきた黒い柴犬をしゃがみこんで撫でてみると、くぅーんと鳴いてすり寄ってくる。とてつもなく可愛い。

「可愛いね。お名前はなんですか?」

「くぅー」

「ふふっ。クゥちゃんか、可愛いね」

そこへ、わふっと鳴き声が聞こえる。ちらっちらっと同じような黒い柴犬が2匹扉から頭を覗かせていた。

「いいよ?おいで?」

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狗の雨宿り