15 未来を信じてる
「……って言うのを想像したんだけどどうかな?」
「精市の想像力には恐れ入りました」
「ふふ、こういう事考えるの意外に得意なのかも」
幸村は楽しそうに笑った。
桜華は隣で彼の今までの話を思い返しつつ、微笑み返した。
「だけど本当、突然何かと思ったら……」
「前に、もし俺達の出会いが違ったらって話になったでしょ?」
「確か、修学旅行の時だったよね……?」
「そう。それを聞いてからたまに考えてたんだ……本当に出会いが違ってたらどうなってたのかなって」
「うん」
「まあ、勿論どんな形であっても俺には桜華しかいないし、見つけ出すだろうけど……それを考えてたら何だか物語が出来ちゃって」
「それが今話してくれたやつなんだ」
「結構自信作だったんだけどどうだった?」
「私も精市と水族館に行きたいな〜って思った!」
桜華はにこっと笑うと、楽し気にそう言った。
それに幸村も嬉しそうにすると、「じゃあ今度の休みに行こうか」と言って彼女を喜ばせた。
「ねえねえ、水族館のマスコットの話とかは……」
「ああ、それも本当だよ。調べたんだ」
「(そこまで!)精市ってそういう所も凝り性だったんだね?」
「話を考えたりするのは好きみたい。入院中もよくしてたんだ」
「そっか」
入院中と言う言葉に少ししゅん……と表情を暗くした桜華。
すぐにそれに気付いた彼は優しく頭を撫でてやると、安心させるように「大丈夫だから、ね?」と声をかけた。
「入院中はそれはもう暇だったからね。色んな話を考えるのは楽しかったよ」
「例えば?」
「ん?そうだな……桜華と一緒に高等部に進級した話とか、大学生になった時の事とか……あとはデートの事を考えたり」
「私との事ばっかり……?」
「桜華との事を考えている時間が一番幸せだからね」
「えへへ……そっかあ……」
「結婚する話も考えたりしたなあ……子供が出来てとかね?」
「結婚……子供っ……!」
「驚く事ないよ?……俺はね、話を考える中で非現実的な事は何も考えなかったんだ。さっきのもしもの話は例外としてね」
「……?」
きょとんとした表情を浮かべる桜華に再び優しく微笑む幸村。
そして一つ一つ、彼女に伝える様に言葉を紡いでいく。
絶対に彼が彼女に対してしか見せないような表情と湛えながら。
「絶対に叶える未来しか考えなかった」
「……」
「俺が桜華を幸せにする事だけを考えていたよ……それが俺にとっての最高の幸せだからね」
「精市……」
「桜華との未来が俺の生きる希望になってたからね」
「ああ勿論、全国三連覇もね」と付け足す様に言った。
桜華は彼からの愛情の篭った言葉に、それだけで有り余るほどの幸せを感じた。
ああ、愛されてるんだな……と改めて感じる桜華。
幸村も、彼女の気持ちが分かったかのように再び話しかける。
「桜華がいてくれたから、俺は頑張れたんだ」
「そう言って貰えて嬉しいな」
「……愛してるよ桜華。誰よりも、何よりも」
「私も、愛してる……精市の事だけ、ずっと」
「この先も俺の傍でそうやって笑って……愛の言葉を頂戴?それだけで俺は……」
「あっ……」
ぎゅっと彼女を抱き締める。
いつもと変わらないはずなのに、何故かその温かさに桜華は泣きそうになって……それを隠す様に彼の胸に顔を埋めた。
幸村はそんな彼女が愛おしくて堪らなくて、少し腕の力を強める。
「桜華との未来を、ずっと信じてるからね」
「……精市以外との未来何て考えられないよ」
「ふふ、それは光栄だな」
ふわりと綺麗に笑った幸村は、そのまま彼女の顔を上げさせキスをした。
甘くとろけるそれに、桜華は幸せと愛を感じて。
そのまま何度も何度もキスをした二人は、改めてお互いの大切さと愛おしさを知ったのだった。
(はっ……ねえ桜華、桜華に触れたい……)
(せ、いち……っ)
(だめ……?もっと桜華に俺の気持ち伝えたいんだ……)
((そんな事言われてだめなんて言える訳ない)……いいよ)
(ん……ありがとう。……桜華も俺に触ってくれる?)
(!)
(桜華からの愛情、沢山頂戴……?)
(精市、ずるいっ……)
(ふふ、俺だって桜華からの愛を色んな形で受け取りたいからね)
あとがき
これで本当の本当に終わりです。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
突発で書き出したのですが、それにしてはとても楽しく書く事が出来ました。
久し振りに初々しい感じの二人をかけて幸せです。
結局は幸村君の創作……の様なオチになってしまいましたが、ですがそれ程までに幸村君は桜華さんが好きなんですね。
どんな出会い方でも、桜華さんを好きになる。
それは彼の中で絶対で必然なんです。
そんな幸村君を今後ともよろしくお願いいたします。
せい