目を覚ます。しかし、瞼が下がりきっているのかと疑うほどの暗闇がそこにはあった。ここまで闇に包まれた世界では、上手く周りを伺うこともできないだろう。
 体を起こすと、背中に痛みを感じる。地底に落ちる際、強かに打ち付けたようだ。耐久力を3減らしてください。

 ぼんやりとしていた視界が徐々に暗闇に慣れてくる。地底に落ちたにしては様子がおかしい。ドーム状に開けた形を保っているここは、人の手によって整備されているに違いない。地下のなにかの施設だろうか?
 
<目星>扉を見つける。覗き窓も鍵も見当たらない鉄製の扉だ。

[扉]
 扉を開けると、正面にある祭壇のようなものがまず目に飛び込んできた。そして、壁一面に書かれた怪しげな魔法陣。壁際に置かれた机の上にはロウソクが鎮座しており、その火は何故か灯っていた。──こんな場所に、崩壊した世界で、火が灯っている?
 ふらりと導かれるようにしてロウソクに近づく。ゆらり、揺れる炎が誘うようにこちらを見ている。見て、わたしはてをのばして、

「だめだよ、PC」

 その瞬間、ぱちんと大きな音を立てて手がなにかに弾かれた。拒まれた、と言うように感じるだろう。否、あなたの手を誰かが掴んだのだ。隣から伸びる手を伝うように、隣を見る。そろりと見上げた横には、真っ白な少年の笑顔があった。

「きみはそっちじゃない。ね?」

 頭の中にふと、単語が思い浮かぶ。その言葉を舌に乗せて、口を開いた。けれど、発したはずの言葉はあなたの耳に届かない。
 しかし、少年は笑った。正解だと言うように。ならば、「そう」なのだろう。口を閉ざして呆然とするあなたに、少年は手を離して少し距離を取る。

「まずはこの部屋を調べてごらん。たぶん、知りたいことがたくさん知れるはずだよ」

 ロウソクの火の光によって視界の確保は事欠かない。
 探索可能箇所は机、祭壇、魔法陣である。

[机]
 ロウソクの乗った机。たくさんの分厚い本が散乱し、積み重なり、机自体の色を見せる箇所の方が少ない。
 ここでは目星がふれる。
<目星>不思議な文様が書かれた表紙をもつ、奇妙な本を見つける。導かれるようにしてそれを目にとる。生気を吸い取られるような感覚を覚え背中がぞわりと震えたが、それでも手はそれを離そうとしなかった。表紙の文字は読めない。何語だろう、と思ったところで、本を見つけたあなたに気づいたのだろう。白い少年が優しげに声をかける。

「読みたいの?いいよ。それもひとつの選択だろうからね。少し疲れるけど、これで読めるはずだ」

 その直後、表紙の文字がするりと頭に入ってきた。試しに1ページ捲ってみると、確かに他国の言葉であるのに貴方は読むことが出来る。
(読む)
 どのくらい熱中していたのだろう。この世のものとは思えない内容がぐるぐると頭の中を駆け巡る。吐き気に似たような感覚を覚え、思わず口元を抑えた。
 禁断の魔導書、「エイボンの書」を読んだことによる正気度喪失が発生します。1d4/2d4でどうぞ。これにおける発狂は起こりえません。クトゥルフ神話技能に+13%をお願いします。
同時に<天文学><オカルト>心の中に不可思議な憧れが芽生える。グリーンランド、その永遠にも続く氷のした。いにしえに失われたハイパーボリアへの熱のような欲求──あなたはこれ以降、ハイパーボリアへの憧憬を獲得します。

 エイボンの書を読んだあなたは、呪文をひとつ獲得するかどうかを選べます。3つの選択肢からひとつ選んでください。もちろん、何も獲得しないということも選べます。例外なくひとつだけです。
@アザトースの招来/退散(6p262)
Aナーク=ティトの障壁の創造(6p274)
Bヴールの印(6p252)

「ここに呼び出された神格はね、何も知らないんだ。いいや、何も考えられないと言った方が正しいかな?事故で呼び出された神がよりにもよって──だなんて、人間も可哀想にね」

 白い少年はそう言って笑う。

[祭壇]
 何かを祀っているであろう祭壇。華美な飾り付けは所々が錆び、所々が溶け、所々が赤黒いもので汚れている。中央にはぽかりと穴のようなものが空いているが、あなたは見るだけで嫌悪感を覚える。進んで調べたいとは思わないだろう。
 ここでは目星が振れる。
<目星>真っ白な鏡を見つける。枠も鏡の部分も真っ白だ。乳白色のガラスだろうか。しかし粉々に砕け散っており、見るも無惨な状態だ。

「これは本来、別の神を祀ってたんだよ。けど、違う神を呼び出してしまったがために儀式は全て台無しになった」

[魔法陣]
 不気味な文様のかかれた魔法陣が壁一面を飾っている。
 ここではアイデアが振れる。
<アイデア>たくさんの魔法陣に、法則性があることに気づくだろう。どうやら周りの円形の部分に同じ単語をずっと並べているようだ。

「Ni1=0n」

 数学の問題だろうか?思わず首を傾げるあなたの背後から、するりと近づいてきた白い少年が耳元で笑った。

「0にn…様々な数を掛けたらいくつになると思う?」

「0だよ。何も無いものはね、何も変わらないんだ。だから、何も成せないものは何も成せない。…けどね、きみは0じゃない」
「だってきみはこの世界のトリガーだ」
「ぼくはこの世界が完全に崩壊したら別の世界に行くから、それでもいいと思ってる。けど、それを望まない者がいるからね」

「「今日」の自分からのメッセージを読んでごらん。「明日」への活路になるかもね」
 そう言った彼の手には、あなたが自宅跡で拾った手帳があった。

「そろそろオブザーバーも限界かな?ここは地下祭壇。地上に戻って安心させてあげようか。きっと彼、取り乱してるよ」

 白い少年が祭壇の穴に手を伸ばす。奈落を感じさせる深淵のような暗闇の穴の中から、不思議な球体が現れた。
 差し出されるそれを、無意識に受け取る。すると、とたんに目の前が白くなっていく。出会ってから一度も変わらないほほ笑みを浮かべたまっしろな少年が、ひらひらと手を振っていた。

「じゃあね。観測者すら動かす無垢で無知で哀れな引き金の人間よ。きみが思うものを正しなさい。鍵はもう知ってるはずだ。それを使って、明日で会おう」