幼馴染の幼馴染
「湊ちゃん大丈夫?」
『さん、がく…?』
自分のベッドの上で意識が浮上すると、目の前には心配そうな表情をした山岳がいた。
頭を撫でてくれる山岳の手は少しひんやりしていて、湊は甘えるようにその手に擦り寄った。
山岳は、まるで猫みたいな甘え方をする湊が自分の上着を着ていることに気付いた。
「湊ちゃんがオレの服着てる」
『あ、ごめんね、これ返そうと思ってたんだけど、寒くて着ちゃった』
「ううん、むしろ着てて」
『いいの?』
「うん、オレの湊ちゃんって感じがするね」
『ふふっ、なにそれ』
「湊ちゃんが大好きってことだよ?」
『私も山岳が大好き』
「えへへ、嬉しい」
『でも』
「でも?」
『風邪うつしたくないから、今日は帰って?』
「えー」
『ね?お願い、うつしたくないの』
「はぁい、わかったよ」
『ごめんね』
「ううん、湊ちゃんお大事にね」
『うん、ありがとう』
山岳が部屋から出ていくと一気に静かになった。
湊は少しだけ寂しさを感じていた。
翌日目を覚ますとすっかり体調はよくなっていた。
念の為朝練は休むことにし、学校に自転車も置いてきてるため今日だけはバスで行くことにした。
バス停でバスを待っていると、宮原ちゃんの姿が見えた。
「あれ?湊ちゃん?」
『おはよう、宮原ちゃん』
「おはよう。珍しいわね、バスだなんて」
『昨日体調崩しちゃって先生に車で送って貰ったから学校にあるんだよね、私の自転車』
「そうだったんだ。もう大丈夫なの?」
『うん、元気になったよ』
「それならよかった」
『うん』
2人の間に沈黙が訪れた時、タイミング良くバスが到着した。
湊と宮原はバスに乗り、ぼーっとしていると、チラチラと視線を気にしている宮原に気付いた。
『宮原ちゃん、どうかした?』
「あっいや、そのっ」
『その?』
「…前から気になってたんだけど」
『ん?』
「山岳と付き合ってるの?」
『へっ?』
「その、前と雰囲気が違うから、それで」
『雰囲気…?』
「山岳が最近…ううん、なんでもない。それで、付き合ってるの?」
『…付き合ってる、よ』
「そっか」
『うん』
「…いつ、から?」
『最近、だよ』
「そう」
視線を遠くにやった宮原。
湊はなんとなく以前から宮原は山岳が好きなのではないかと感じていたがため、とても気まずかった。
そうこうしているうちに、バスは学校近くに停車し、下車した。
下駄箱に着くまで黙って2人は並んで歩いた。
そして、教室の近くに来た時に宮原が口を開いた。
「湊ちゃん」
『…なあに?』
「山岳のこと、頼むわね」
『…うん』
「またね、湊ちゃん」
『じゃあね、宮原ちゃん』
2人とも不器用ながら笑顔を浮かべてお別れをし、それぞれの教室に入ったのであった。