熱
雨に濡れてしまった。
梅雨の季節、部員達は三本ローラーを回している中、湊は洗濯メンバーと共に洗い終わった洗濯物を屋内に干していた。
次々に洗濯が終わる度に屋内へと運んでいる途中、土砂降りに合い、湊は思い切り雨に打たれしまった。
『くしゅんっ』
「大丈夫?」
『大丈夫ですよ、拓斗さん』
「うーん。湊ちゃん、その」
「おい、湊、これ着とけ」
『わぶっ、雪さんなんで』
「目のやり場に困るだろうが」
『す、すみません』
湊は黒田から借りた服を上から着るとそのまま洗った服を室内に干し始めた。
そして全て干し終わると、ドリンクホルダーを回収へとするためにトレーニングルームへ訪れた。
せっせとドリンクホルダーを回収をしていると、三本ローラーを回している荒北と目が合った。
目線で呼ばれているような気がして湊は荒北のもとへ足を運んだ。
『どうかしましたか?』
「ソレェ、黒田のォ?」
『あ、はい。さっき雨に濡れちゃったので、これ着とけって』
「ふーん」
『靖友さん?』
「真波に見つかる前に着替えた方がいいと思うヨ」
『は、はい』
湊はドリンクホルダーを回収したあとに、部室に戻り、自分のロッカーをあけた。
そこには夏の体操服と、以前に山岳から借りた長袖の上着が入っていた。
湊は山岳の上着を手に取り袖を通した。
『また、洗って返そう』
湊はそのまま仕事を続けに戻った。
凛と志穂と一緒にドリンクホルダーを洗い、新しくドリンクを作っていた。
「湊ちゃん、大丈夫?」
『えっ』
「顔が赤い気がするよ」
「体調悪い?」
『あ、えっと、その…』
「湊ちゃん!!?」
「ほ、保健室に運べる人呼んでくる!」
どさりと足から崩れるように倒れた湊。
なんとか意識はあるが頭がぼーっとしているようだった。
凛は急いでトレーニングルームへと向かった。
志穂は湊のおでこに触れ、熱があることに気付くと、氷水を用意し始めた。
「靖友、こっち」
「あ、靖友先輩、湊ちゃん熱があるみたいです」
「たくっ、まぬけチャァンがァ」
『んっ、ごめんなさい、靖友さん』
「気にせず寝テロ」
『は、い…』
「保健室連れてくっから、お前らは仕事の続きしてていいヨ」
「うん、よろしくね」
荒北は湊を抱き上げ、そのまま保健室へと向かった。
「凛先輩」
「ん?」
「なんで靖友先輩呼んだんですか?」
「ああ。湊ちゃん倒れたから保健室に運ぶの手伝ってって言ったら、靖友が俺が行くって」
「やっぱり靖友先輩…」
「湊ちゃんのこと好きだよねえ」
「あ、凛先輩もそう思います?」
「わかりやすいからね、靖友は」
「たしかにそうですね」
保健室につくと、先生は会議に出るために保健室から出ていこうとするところだった。
事情をつたえ、保健室を開けてもらい、荒北はベッドに湊を寝かせた。
『靖友さん』
「なんだヨ?」
『ありがとうございます』
「…おう。とりあえず熱測れヨ」
湊は体温計を手渡され、受け取ると、ベッドの中でもぞもぞと動き、体温を測り始めた。
熱でいつもより赤い顔で、体温を測るために少し肌蹴た湊に荒北はバッと顔を逸らした。
「おまっ、まだオレいるのわかってンのォ!?」
『え?』
「あーもー、わからないならイイヨ」
ピピピッと鳴る体温計をとり、湊が体温を見ようとすると荒北に体温計を奪われた。
「ゲッ、38度近くあるじゃナァイ」
『今、寒いから、たぶんまだ上がりますね』
「はぁ。さっき雨に濡れたのが原因か」
『たぶん、そうですね』
「とりあえず冷えピタ貼るかァ?」
『…はい』
荒北は棚から冷えピタを取り出すと貼る準備をした。
そして、湊に前髪を手で左右にわけとくように指示した。
冷えピタを湊のおでこに貼った際、自分の体温と冷えピタとの温度差から『んっ』と思わず声を漏らす湊に荒北の動きが一瞬止まった。
『靖友さん?』
「…無防備すぎダロ、まぬけチャァン」
『えっ』
「イイからさっさと寝テロ」
『…靖友さん』
「ンだよ」
『ありがとうございます』
「…オウ」
保健室から出ていく荒北の表情は少し赤かった。
なにやってんだ、オレは。アイツは病人だぞ。それにあの不思議チャンの彼女だろ。と頭を抱えていた。
その後、湊は保健室に戻ってきた先生に家まで車で送ってもらったのであった。