親しくなる



偶然だった。
今日のお昼休みは、りつも夏也も委員会に呼ばれてた。
そして私はたまたま外に出たくなった。
校舎から少し離れた所にあるベンチを見つけた時に、そこには先約がいた。

『荒北先輩?』
「あ?まぬけチャァンじゃなァい」
『いつもまぬけ面はしてな…あ!猫ちゃん!』
「みやぁお」
『かわいい』
「そいつに飯狙われてンぞォ」
『え!?これはダメだよ、猫ちゃん。あ、お隣いいですか?』
「好きにすればァ?」
『ありがとうございます』

湊は荒北の隣にすわると手に持っていたお弁当を広げた。
もぐもぐと食べ始めた湊を荒北はじっと見ていた。

『どうかしました?』
「それ、自分で作ったンかァ?」
『今日は時間があったので作りました。あ、何か欲しいですか?』
「じゃァ、卵焼き」
『はい、どーぞ』
「おう、サンキュってオイ!」
『え?』
「え?っじゃねェよ!なんで食べさせようとしてンだバカチャァン」
『だって卵焼き欲しいって』
「だとしてもよォ。なんかあンだろ普通」
『山岳は普通に食べますよ?いらないんですか?』
「不思議チャンコンビかよォ」

荒北はボソッと呟いた後に湊の箸で差し出された卵焼きを頬張った。
美味いじゃないのォと呟く荒北に湊は少し照れ笑いをした。

『荒北先輩』
「あ?」
『荒北先輩って優しいですね』
「はァ?いきなりなんなわけェ」
『靖友さんって呼んでいいですか?』
「…湊の好きにすればァ」
『やっぱり靖友さん優しいですね。ありがとうございます』
「別にィ」

少し照れてそっぽを向く荒北に湊は嬉しそうに笑った。

『あ、先輩。ちょっと電話かけていいですか』
「好きにすればァ」
『ありがとうございます。…もしもし、山岳』
「湊ちゃんどうしたの?」
『今日体育あるの忘れてて、体操服貸してもらえないかな』
「体育っていつ?」
『5限目だよ』
「ごめん、今持ってるから間に合わないと思う」
『…今どこにいるの?』
「あは」
『まだ来てないんだね。委員長に怒られるよ』
「想像ついちゃうねー」
『気をつけて来てね』
「はぁい!」

通話を終えると湊は荒北の方を向いた。

『靖友さん』
「ンだよ」
『体操服貸してください』
「はァ!?たくっ、しゃァねェなァ」
『ありがとうございます!』
「部室にあるから着いてこい」
『はーい!あ、そのまま部室で着替えるので覗かないでくださいね』
「はァ!?」
『冗談ですよっ』

湊は荒北に体操服を借りて、部室で着替えた。
思ってたよりぶかぶかな体操服を着た湊は、靖友さーん、ぶかぶか!と無邪気に笑って声掛けた。
そんな無防備な湊に荒北は軽くため息をついた。

体育の時間では、胸元に荒北と書かれた体操服を着た湊を見て、夏也とりつはお互い顔を見合わせて苦笑をした。

「湊〜」
『ん?どうしたの?』
「東堂さんじゃねえの?」
「夏也何言ってんの。そこは真波でしょ」
「いや、東堂さんだろ」
「でも体操服は荒北って書いてる」
「それな、いったい何があったんだよ」
『え、2人とも何言ってんの』
「「なんでもない!」」
『そう?変なのー』

特に気にしていない湊と、周りでヒソヒソと噂されてる事に気付いてる夏也とりつは大きくため息をついたのであった。



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