さみしがりや



いつものように早朝から山岳と山を自転車で登る。
頂上に着くと、近くに自転車を停め、自販機で飲み物を買い、景色を見渡せる場所を眺めてた。

「湊ちゃん」
『ん?うわぁっ』

名前を呼ばれ体ごと振り返ると正面から山岳が抱きついてきた。
湊は山岳の行動に驚きはしたが、『どうしたの?』と聞きながら抱きしめ返すように背中に手を回した。

「湊ちゃん」
『ん?』
「離れていかないで」

山岳の顔を見ようと一度体を離そうとすると更にきつく抱きしめられて、山岳の顔を見ることは出来なかった。
山岳が一体何を悩み、不安に思い、このような行動をしているのかを長年一緒にいた湊もわからなかった。

『山岳』
「お願い、嫌いにならないで」
『ならないよ、絶対』
「本当?」
『うん、本当だよ』
「じゃあ…」

湊ちゃんのハジメテ、全部オレにちょうだい。
山岳はそういうと湊の唇に己の唇をくっつけた。
湊は一瞬何が起こったのか分からず、山岳を見つめた。
そして理解が追いついた時、ボンッと爆発するように一気に顔が真っ赤になった。
そんな湊の様子に山岳は嬉しそうに笑った。

『えっ…と、その、今…えっ?』
「湊ちゃん顔真っ赤。ねえ、もう一回してもいい?」
『えっ…んんっ』

返事を聞く前にもう一度キスをする山岳。
啄むようなキスを落とし、酸素を求めて薄く開けた湊の口に捩じ込むようにぬるりと舌をいれた。
山岳の舌に翻弄された湊は段々と力が抜け、足が震え始めた湊は倒れ込まないように山岳にしがみついた。
どれくらい続いたのかわからない。
ただ、深い深いキスが終わる頃には湊は1人で立てなくなっていた。

『山岳…なんで』
「湊ちゃんがオレの傍から離れるのがいけないんだよ」
『離れてなんて、ないよ?』
「…オレ、離さないよ」

再び強く抱きしめられ、山岳の表情が見えなくなった。
しかし山岳の抱きしめる腕が密かに震えてる事に気付いた湊は抱きしめ返す腕に力を込めた。


あれから、暫くすると山岳は湊を離し、ロードに跨った。
帰ろうと笑っていう山岳に湊は頷き、自分のロードに跨った。
坂を下る時に頬を撫でる少し冷たい風は赤くなった顔を冷やすにはちょうど良かった。



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