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 ザッザっと、サンダルがコンクリートを擦る音が、都会の暗い夜道に響く。
 時計の短針が頂点を回った時刻、人気のない路上に立つ街灯が、薄暗く星川を照らす。星川が手に持つリードの先には、成犬のゴールデンレトリバーのレオがしっぽを振りながら、嬉しそうに歩いている。
 レオが最初に星川の家に来たときは、まだ両手で包めるほど小さかったのに、あれから6年経った今では、星川が力で負けてしまうほどに大きくなっている。強い力で来られても、愛嬌のある大きな瞳で見つめられたら、星川はついつい何でも許してしまう。
 レオには甘い星川だが、会社では部下に厳しく、元々目つきが悪いことも相まって、部下からは怖がられている節がある。だが、誰よりも仕事が出来るため、一目置かれている。
 夜道に星川とレオ以外に人影は見当たらない。昼間は人の往来が激しいこの道も、夜中の人通りはほぼない。
 仕事終わりでスウェット姿の星川は、欠伸を噛み殺しながら、いつもの散歩ルートを辿る。
 いつもの公園に入った途端、レオが急に走りだし、強い力に引かれた星川の手から、リードが離れてしまった。
「おい、レオ!」
 星川が呼びかけても、レオは一目散に駆けていく。
「相変わらず元気だな」
 星川は小さくため息を吐いて、仕事終わりの疲れた体に鞭を打ち、レオを追いかける。
 案の定、レオはすぐに見つかった。草むらから、レオの背中が見えている。レオは隠れているつもりかもしれないが、その大きな体は隠れ切れていない。
「レオ、急に走るなよ。そんなところで何してるんだ?」
 星川が草むらに足を踏み入れた瞬間、レオが強い力で体当たりをしてきた。
「うわっ!」
 地面に強く背中を打ちつけ、痛みに顔を顰める。
「痛ってぇ…、なにするんだよ」
 星川の腹の上にのしかかったレオは、しっぽを振って楽しそうにハッハッと口で息をしている。すると急に、レオが星川のTシャツの裾から頭を突っ込み、腹をぺろぺろと舐め始めた。
「…っおい、レオ!やめろって」
 上ってきたレオの舌が、胸の突起を執拗に舐めまわす。
「おい、やめろよ、レオ。ここ外だぞ」
 星川の制止をレオは全く聞いていない。引き剥がそうとレオの毛を掴んで引っ張るが、びくともしない。
 乳首をざらざらとした舌で舐められて、星川の中にじわじわとあらぬ衝動が込みあげてくる。
「ここじゃ、やばいって。誰か来るかもしれないだろ」
 だが、星川の周りは茂みに覆われているため、近くに来ない限り、星川がここにいることは分からないだろう。それに、今は夜中で人が来ることは滅多にない。星川もそれが分かっているから、やめさせなければという気持ちが揺らいでしまう。


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-家庭内密事-
-彼の衝動-