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「何でダブルベッドなんだよ」
「いいだろ、毎日一緒に寝れるじゃねぇか」
 運び込まれた家具を見て呆れる俺の額に、圭介は音を立ててキスをする。
 圭介の大学進学と共に、俺達は二人で暮らすことになった。会社と大学のちょうど中間に位置するマンションで、間取りは2DKだ。それぞれの個室があるのに、圭介は俺の部屋にベッドを置かず、圭介の部屋に大きなダブルベッドを設置した。昨日越してきたばかりで、まだ床には段ボールが積まれている。
 俺と同棲することは、先月から考えていたらしい。その段取りに忙しくて、俺を抱く暇がなかったと圭介は唇を尖らせる。
 笹部先輩との一件が決着してからは、毎日のように抱いてるじゃないかと、心の中でツッコむ。煙草による背中の火傷も、もうほとんど痕は残っていない。
 笹部先輩もあれでもう懲りたようで、何の音沙汰もない。
 親には、一人暮らしをすると言いだした圭介が怠惰な生活を送らないように、俺が見張ると言っておいた。あまりうまい言い訳ではないし、親には反対されかけたが、何とか説き伏せた。口が裂けても、圭介との関係は言えない。
 俺は例のサイトを削除し、男を漁りに行くこともなくなった。今の俺にはもう必要ないからだ。
 圭介には言っていないが、本当は元から圭介との動画なんて撮っていない。ハッタリをかまされたことを圭介が知ったら怒るだろうから、これからも言うつもりはない。
 今の俺達を繋ぐ媒介は、動画なんて脆いものじゃない。
「兄貴!」
「おわっ!」
 突然タックルしてきた圭介に、ベッドに押し倒される。顔を見合わせて、二人して笑う。抱き合って、じゃれつくようなキスをする。
 圭介がいれば、これから遭遇するであろう困難も乗り越えられる気がする。俺達は男同士で、兄弟で、決して人には言えない関係で結ばれている。普通の人よりも厳しい道のりが待っているかもしれない。
 それでも二人で乗り越えて行こう。
「好きだよ、圭介」
 温かな愛情が、胸に溢れていっぱいになる。


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-家庭内密事-
-彼の衝動-