01 室内に濡れた音と、父の荒い息遣いが響く。 六畳一間のボロアパートの畳に、俺の汗が滴り落ちて、小さな染みを作っていく。 部屋の隅には弟の周太郎(しゅうたろう)が、震えながら膝を抱えて座っている。 お母さんはいない。周を産んですぐ、俺が一歳の時に死んだ。 いるのはお父さんだけ。俺を犯して悦ぶお父さんだけだ。 尻の感覚がない。でもきっと、お父さんの精液と俺の血でどろどろになっている。 背後から、啓太郎(けいたろう)、啓太郎、とお父さんが俺の名前を呼びながら、何度も何度も腰を振る。 濡れた音が響く。 ぐちゅ、ぐちゅ。 ふと視界に、黒いランドセルが映った。 あ、宿題やらなきゃ。明日、先生に怒られる。 小さなキッチンは、ここ数日使われていない。 今日の晩御飯はなんだろう。今日は、食べさせてくれるかな。 ぐちゅ、ぐちゅ。 むき出しの腕に、紫色の痣がある。でも今日は、これ以上殴られない気がする。お父さんの機嫌がいいから。パチンコに勝ったのかな。いつも機嫌のいいお父さんだといいのにな。 だって、機嫌の悪いお父さんは、よく俺にお仕置きをする。裏の物置に閉じ込めるんだ。 俺はそれが一番いやだ。狭くて暗いあそこで一人、夜を過ごすことが怖い。周と二人で閉じ込められた時は、一人じゃないからまだ耐えられる。でも一人で閉じ込められたら、耐えられない。真っ暗闇の中、この世に俺一人取り残されたように感じられて、無性に怖くなる。いくら喚いても、誰も助けに来てくれない。俺は一人が怖い。 今日は、お仕置きされませんように。 ぐちゅ、ぐちゅ。 ぐちゅ、ぐちゅ。 -家庭内密事- -彼の衝動- |