大きなトランクをガラガラと引きずりながら空いているコンパートメントがないか探す。
しかし、やはり列車が発車するまで動かなかったことで周りに比べかなり出遅れており、なかなか空いている所や寄せてもらえそうな所が見つからない。
「ムリそうね、、」
列車の端から端まで移動した後ポツリと呟いた。
座れないのならしょうがない、重たいトランクを引きずるのも疲れたので通路の邪魔にならない隅にトランクを倒し、その上にちょこんと腰をかける。
立っているのは流石に辛いが半日くらいならここで過ごすのも悪くないと思い、母が持たせてくれたチキンの入ったサンドイッチを出そうとポケットに手を突っ込んだ。
「君、通路に座り込んでどうしたの?」
「え、」
手を突っ込んだ状態でピタリと体が止まる。
声をかけられた方を見上げれば鷲色の髪をした恐らく(間違いなく)上級生の男の人と目が合った。
上級生の彼はキョトっとした目をして私を見ている。
それもそうだ、一般的に通路とはその名の通りで間違っても座り込む場所ではないのだから。
「あ、えっとコンパートメントが空いてなくて、、」
これから通う学校の上級生に話しかけられ、ましてこんなみっともない所を見られて戸惑いながら返事をすると、上級生の彼は「なるほど」と呟いてそれからふわっと微笑んだ。
その笑顔があまりにも綺麗で思わず見とれてしまった。
「それなら僕達の所においでよ。学年は上で男ばかりだけど、夜までそこに居るよりはずっと良いだろうから」
「えっ!」
思っても見なかった提案に上擦った声を出してしまう。
「いえ、そんな、ご友人と取っているコンパートメントに、私、お邪魔はできません」
「気にしないで。むしろ僕の方が、君みたいな女の子がずっと通路に座っている方が気になるから」
吃りながらも有難い提案を断ったが、彼は笑いながら「ね?」と後押しするように言い、私の手を握り立ち上がらせて反対の手でトランクを持ち上げた。
柔らかい笑顔と裏腹に、意外と強引なようだ。
「え、あの、、本当にご迷惑じゃありませんか?」
「大丈夫だよ。それより君は新入生で合ってるかい?」
「あ、はい、今年から入学するオリヴィア・ウィーズリーです。よろしくお願いします」
「僕はリーマス・ルーピン。グリフィンドールの7年生だよ。オリヴィアって呼んでもいいかな?」
「はい、もちろんですルーピン先輩」
「僕のことはリーマスでいいよ」
「、リーマス先輩」
初対面にも関わらずポンポンと会話が進むのはリーマス先輩が話し上手だからだろうか。
手を引かれながら辿り着いたコンパートメントの前で本当にこのままお邪魔しても良いのか思案しているとリーマス先輩が振り返ってにっこり笑った。
「上級生ばかりだけど、緊張しなくても大丈夫だよ。良い奴らだからすぐ仲良くなれる」
「でも、、」
「大丈夫。僕が隣に座るから。いいかい?」
「、はい」
リーマス先輩が、私が弟達にするように屈んで目を合わせてきたのでこれ以上の言葉が紡げなかった。
さらりと私の髪を梳いたリーマス先輩がそのままコンパートメントの扉に手をかけるのを見て、リーマス先輩と繋いだ手をきゅっと強く握る。
カラカラと開かれた扉の向こうで最初に見えたのはくしゃくしゃした髪で丸眼鏡をかけた男の人だった。