ある日、ついにリリー・エバンズとジェームズ・ポッターが交際を始めたらしいと噂が広がった。
それは本当の事で、談話室でベルや双子と一緒に宿題をしている私に、ジェームズ先輩はエバンズ先輩を紹介してくれた。
「まだオリヴィアにちゃんと紹介してなかったと思ってね。彼女が僕の恋人、リリーだよ!」
やたら恋人という所を強調して言ったジェームズ先輩にエバンズ先輩が照れくさそうに顔を赤らめながら微笑んだを見て、なんて綺麗な人なんだろうと思わず見とれてしまう。
「こんにちは、オリヴィア。彼らからいつも貴女の事聞いてるわ、とってもかわいい女の子だって」
「えっ!、いえそんな、私もいつもエバンズ先輩の事聞いてます、頭が良くて美しくて天使のようだって」
間近で見るエバンズ先輩はやっぱり綺麗で、自分がかわいいと言われた事に戸惑いながらもそう返すと、エバンズ先輩はじろりとジェームズ先輩を睨んだ。
私が聞いたエバンズ先輩についてが10割ジェームズ先輩から聞いたものだと気付いたらしい。
ジェームズ先輩が「本当の事じゃないか」としれっと言うとエバンズ先輩が怒ったように言い返そうとしたので慌てて割って入った。
「でっ、でもその通りだと思います!エバンズ先輩は本当に綺麗だし、魔法薬学の授業の時スラグホーン先生がいつも先輩の名前を出すので私達みんな先輩が優秀なこと知ってます」
ね?とベルと双子の方を向けば彼女達は揃って大きく頷くので、エバンズ先輩はまた顔を赤らめながら「なんだか、恥ずかしいわ」と今度は苦笑してから、そんな事よりと話を逸らす。
「エバンズ先輩だなんて、堅苦しいわ。私のこともリリーって呼んで」
私達4人が笑って頷くと、リリー先輩も笑ってくれて、その笑顔があまりにも美しかったので花がほころぶ笑顔ってこういうのを言うんだと思った。
隣からベルがおずおずと言った感じでリリー先輩に話しかける。
「あの、リリー先輩、もし良ければ魔法薬学の宿題を見てもらえませんか?」
私と双子は魔法薬学に関して特に問題はないがベルは虫が大嫌いなので、材料に虫を使ったりする魔法薬学も苦手なのだ。
申し訳なさ気にお願いするベルに、リリー先輩は快く頷いてくれた。
私とベルの間に移動したリリー先輩に構ってもらえなくなったジェームズ先輩が拗ねたように口を尖らせた時、男子寮からリーマス先輩達が降りてきた。
双子に気に入られているピーター先輩は誘われるまま双子の間に座り、シリウス先輩は拗ねてるジェームズ先輩をからかって、リーマス先輩は私の隣に腰をおろす。
「やあオリヴィア、宿題かい?偉いね」
「り、リーマス先輩」
当たり前のようにリーマス先輩が私の隣に座ってくれた事や頭を撫でる手にドキドキして宿題をしている手が止まってしまう。
「ん?」とこちらを見るリーマス先輩に、ぶんぶんと首を振りながらなんでもないことを伝えるが、自分の顔が赤くなってしまっているのがわかる。
ただ次の瞬間嫌な予感がして正面を見ると、ニヤニヤしたエリーと目が合った。
うわ、嫌な予感。
「...ピーターせんぱ〜い!宿題教えてください!」
「え?僕よりジェームズやシリウスの方がいいんじゃないかな、」
目が合うなりおもむろにピーター先輩に声をかけるエリー。
ピーター先輩が自分は教えるのに向かないと言うと、反対側からアミーまで参戦しだした。
「ピーター先輩がいいんです!」
そう言って双子が両サイドから覗き込むようにお願いすると、ピーター先輩は困った顔をしながら「わかったよ」と頷いた。
そしてエリーはこっちを向いてニヤニヤしたままリーマス先輩に教えてもらえとアイコンタクトで伝えてきたので私は頬を引き攣らせてしまう。
教えてもらうかどうかはともかく、リーマス先輩が隣にいると緊張してしまうので、後ろで拗ねたままのジェームズ先輩とそれを面白がってるシリウス先輩がオモチャのクアッフルでキャッチボールをしている所にリーマス先輩も混ざったりしないかなと思った。
そんな事を考えていたら、完全に宿題をする手が止まっていた。
「オリヴィア?手が止まってるけど、どこかわからないのかい?」
それに気付いたリーマス先輩が声をかけてくれたので、私は動揺しながら戯言薬の使用例について書かなくてはいけないが思いつかないと言うと、リーマス先輩はパラパラと私の教科書をめくって「それならこれを書けばいいと思うよ」とページを指さした。
そこにはどんな場面で戯言薬が有効かが書かれていたのでお礼を言って頷く。
正直、戯言薬は悪戯にしか使えないと思っていたのでものすごく助かった。
「リーマス先輩は魔法薬学が得意なんですか?」
「いや、大の苦手でね。宿題はほとんど教科書の丸写しなんだ」
オリヴィアは真似しちゃダメだよといたずらっぽく笑うリーマス先輩に心臓がキュンと疼いた。
私は心臓の病気になってしまったのだろうか。
「、でも意外です、リーマス先輩頭良さそうだから、宿題も簡単に終わらせると思ってました」
「そうかい?うーん、防衛学は割と得意なんだけどね、薬学はてんでダメだよ」
「えっ」
そう言って苦く笑うリーマス先輩に、やっぱり意外だと思った。
なんて言えばいいか分からず、私も苦笑いしておく。
そして教科書を写してあと5センチ埋めれば宿題が終わる、と思ったその時−−
ガチャン!
音をたててゴブレットが倒れ、羊皮紙が一瞬でカボチャジュースに浸った。
ついでにビチャッと顔にも思いっきりかかった。
何が起こったのかわからず、ポカンと口を開ける私。
顔を上げるとベルも双子も同じ顔をしている。
「ジェームズ!シリウス!何するんだ!」
「皆の宿題がカボチャジュース塗れじゃない!貴方達7年生にもなって大人しくしてられないの!?」
「ごめんごめん!わざとじゃないよ!怒らないでおくれリリー!」
「手が滑った、悪ぃ」
リーマス先輩とリリー先輩の声で、ようやく何が起きたのかわかった。
どうやら後ろでキャッチボールをしていた先輩達が手を滑らせて、ぶん投げていたクアッフルがテーブルに着地したらしい。
全員分の宿題を隈無く浸すなんてある意味すごいと場違いなことを考えた。
「あと少しだったのに、、」
ベルがポツリと呟くとリリー先輩がもっと怒り、しゅんとしている双子の頭をピーター先輩が撫でる。
私はベトベトになっている顔をまだ何も書いてない羊皮紙でゴシゴシと拭った。
今日のハンカチはママにウサギの刺繍をしてもらったお気に入りなので使いたくないのだ。
「あぁオリヴィア、強く擦っちゃダメだよ。赤くなってしまう」
見兼ねたリーマス先輩が自分のポケットから綺麗に畳まれたハンカチを取り出したのでギョッとする。
そのまま私の顔についたカボチャジュースを優しく拭き取ろうとするリーマス先輩。
「あ、あのっ、大丈夫です!先輩のハンカチが汚れちゃいますっ」
「気にしないで」
優しく強引にハンカチを押し当てられた。
気にしないなんて無理です。
「、先輩、!」
「ほら、赤くなっちゃってる」
リーマス先輩はそう言って眉を下げるけど、違う、今のは違う。
顔が赤いのは擦ったせいじゃない。
そう言いたいのに至近距離で見つめられて、パクパクと口を動かすけど言葉が出てこない。
「「わぁお!真っ赤ねオリヴィア」」
ハッとして双子を見れば、宿題を綺麗にするために呪文を唱えるピーター先輩をほったらかしてニヤニヤとこちらを見ている。
視線を動かせばベルも、リリー先輩に怒られてるジェームズ先輩とシリウス先輩までニヤついていた。
「〜〜〜っ!」
なんで先輩達までニヤニヤしてるの!!
先輩達なんてもっとリリー先輩に怒られてしまえ!と、そう思った。
そう、思ったけど。
「オリヴィア、カボチャジュースが顔にも飛んでよかったね」
ニヤついたままジェームズ先輩が口パクでそう言って、隣でシリウス先輩もまったくその通りだという風に頷くので、途端に真顔をなった私はジェームズ先輩とシリウス先輩をキッと睨んでから床を指さした。
「先輩達正座!!!」
その後項垂れたジェームズ先輩とシリウス先輩にピーター先輩が取り切れなかった宿題の汚れを落としてもらってから、リーマス先輩とピーター先輩、リリー先輩にそれぞれお礼を言ってから女子寮に駆け込んで、リーマス先輩達の前で正座させて怒鳴るなんて、と反省した。