5話

「……佐々木さんって結構いたずらっ子だったりする?」
「どうだろう?」
「なんか、意外な一面だと思う。クールな人だと思ってたし」

 クラスでの知っている彼女と同一人物とは思えない。知っている人なのに、初めて会うみたいにドキドキが止まらない。

「……ねえ、神尾くん。本当は甘党でしょ?コーヒーが好きなんてのも嘘」
「バレてたんだ」
「だって、前にここでフレンチトーストにメープルシロップを山ほどかけて食べてるの見たことあるし」
「いつ!?」
「んー、席替えする前だから2週間くらい前かな。頼んだコーヒーに手を付けないのも変だしね」

 最初から全部お見通しだったのか。引きかけた熱がまた顔に集まっていく。
 
「……やっぱり、砂糖入れてもいい?本当は2本入れないと飲めないんだ」
「もちろん。甘党は砂糖がないと生きていけない生き物だからね」

 今日、格好つけて砂糖からの卒業を試みた僕は失敗に終わった。まだまだ砂糖がなくちゃ生きていけないらしい。