06

「確か九重夜天だったか、此奴もファミリーに入れろ」
「はぁっ⁉獄寺君はともかく夜天にまで目をつけるなよ‼」

家庭教師としてやってきたリボーンが来てからというものの、日常が物騒極まりないことで埋められている気がしてならない。
先日の獄寺の一軒でお腹が痛いというのに、リボーンは更に幼馴染にまで目をつけたことに綱吉は憤慨した。

「小さい頃から信頼している幼馴染が傍にいればツナも納得するかなって思ったんだもん」
「もんじゃない!しかも夜天は一般人だぞ!お前の都合で彼奴を危ない世界に引き込むな‼」
「………彼奴、本当に一般人か?」
「は?何言って……」
じぃっと見つめてくる黒い瞳に、思わず綱吉は二の句も告げれなくなる。

「意外だな、もっと反論してくるかと思ったが」
「な、……怒ってるよ、ていうか周りを巻き込むな!」
「口答えするんじゃねぇ」
「ぐべっ」
リボーンの鋭い蹴りが頬に炸裂する、綱吉はずしゃぁっと勢いよく絨毯の上に倒れた。

「俺が言っているのは九重に対するお前の態度だ」
「うぐ……」
「信頼はしてるがそれと同じくらいには何か気になるってとこか?」
「心読むなよ……」
「読めちまうからな」
にまぁと笑みを浮かべるリボーンに、ツナはジトリと目線を寄越す。
この家庭教師が来てからというものの、本当にろくな事がない。

(そりゃ、京子ちゃんと友達になれたのは此奴のお陰でもあるけどさ……)
話してみたいという密かな願いが叶ったのは良いものの、告白なんていうイベントで強制的に接触させた罪は重い。
その後の展開にも文句を言いたいことばかりではあるが、(不本意とはいえ)友人も出来たので心の隅では感謝している。

リボーンがそのまま無言で続きを促した。
「……あいつ、昔から嘘つきなんだ」
「嘘つき?」
「あー、いや嘘つきっていうか……」
本当の事は話さないっていうのかなぁ……、そう自信なさげに眉を下げる教え子にリボーンはその無表情を分かりにくく崩す。
その事に気づかず、綱吉は小さい頃の事を思い出した。

此方に手を差し伸べてくれた時も、此方に向けてくれる優しい笑みも全部覚えている。
綱吉にとって夜天とは、蒸発した父とは違い一番に身近にいる男であり、大事な幼馴染だ。
一番に綱吉を理解しているのも夜天であると自負しているし、それと同時に綱吉も夜天の事を一番に理解していると思っている。
けれど時々、綱吉を誰かと重ねてみているような何処か懐かしそうな顔をしている時があって。

その度に何とも言えない、変な感情が胸の内を巣くうのだ。
今日だって、獄寺の口から出てきたボンゴレという言葉に驚いていたけれど、それと同時に目元を和らげていたのだから。

(……なんか、嫌だな)
無意識の内に眉を顰め綱吉はそのまま口を噤む。
その様子をリボーンは盗み見て、ふむ、とこの教え子と幼馴染の関係が何やら複雑な事を理解した。
(此奴、無意識に九重に対してだけ超直感の片りんを見せてやがるな……、それだけツナにとって九重は特別な何かがあるってことか……?)
それとも、とリボーンは最悪の可能性を考える。
もし九重夜天という男が普通の一般人ではなく、仮に綱吉を狙う刺客であったら、と。
(……少し調べてみるか)
そうリボーンが思った翌日。

改めて九重夜天という男を見る。
黒い髪に日本人にしては珍しい水色の目、簡単に調べた事前の情報では彼の親戚にイタリア人がいるらしい、その血を継いでいるのだろう。
人間関係も勉強も運動神経も可もなく不可もなく、至って普通の中学生だ。
それだけであれば、別段気にも留めなかっただろう。
けれど彼はリボーンと初めて会った時、妙にリボーンに対して警戒の色を見せていた。
日常生活からも無意識ではあるが、周囲を若干警戒している節がある、それが何となく引っかかった。

何かしらの理由があれば対処はするが、リボーンが彼にあったのはあの時の一回だけ。
もし仮に彼が綱吉を狙う刺客であれば、家庭教師と銘打っているが最強のアルコバレーノの一人であり、世界最凶のヒットマンであるリボーンの引き金が九重を襲うだろう。

そうでなければ、ツナの護衛として傍に置けるくらいではないかと思う程で。
上がった口角を隠しもせずに独りごちる、そのまま爆発した煙の向こうを眺め見る。
九重が敵か味方かを判断するために少々手荒いが綱吉の部屋に爆弾を仕掛けた。

見習いの殺し屋程度なら簡単に潜り抜けられる代物だ、もし一般人であっても服が少し焦げる程度。
さて、吉と出るか凶と出るか、とハンモックの上で傍観を決めた。

九重と一緒に爆発に巻き込んだ教え子は先ほどの叫び声から一切音沙汰無し。
気配としては二つちゃんと存在しているので生きてはいるだろう。
問題は―。
そう思った直後、前方から鋭い殺気と何か細いものがリボーンの方へと飛ばされる。
顔を少し逸らしてそれを回避し、飛んできた物を視界に写す。
それは綱吉がよく使っている赤色のボールペン、そういえば昨日勉強中に何処かへ失くしたと教え子が言っていた、カーペットにでも落ちていたか。
それが芯の部分がむき出しになっており芯ごと壁に突き刺さっていた。

部屋に充満していた煙の中から二つの影が現れる。
一つは教え子である綱吉の姿。
けれど顔は此方に向いていなく、何かに抱え込まれるように身動きが取れていない。
そしてもう一つ、煙が晴れて此方を睨みつけ綱吉を抱え込んでいた張本人が水色の目をこちらに向けていた。
先程のような強い殺気はなりを潜めているがピリピリした殺気が首元を駆け、リボーンは自分の人選が間違っていなかったこと、そして九重夜天という男が刺客の可能性では無くなったことにほくそ笑んだ。

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