01

「うっそだろぉ」

齢30前後の人生にして、初めて知らない部屋で目を覚ました。
別に後ろ暗い事をした覚えも無ければ、強盗なんていう犯罪も起こしていない。
 こんな豪奢な部屋に一人泊まるよりかはビジホで眠るだけの方が効率がいい、んな大金あるわけない。
ここに来た覚えもなければ、何故か先程から脳裏を過ぎる情報の数々に頭が痛くなってきたと言うのもある。

――ぶっちゃけて言うと、俺の姿を中学生ほどに縮めた少年がイケメンな男達とあはんうふんな事をしている映像が脳裏を絶え間なく流れていた、んな映像見たくないんですけど。
その少年は所詮面食いでしかも結構な金持ちらしく、自分の元に男や女を集めては食い散らかし自分の思い通りの命令を遂行しなければ虐待当たり前というクズな少年だった。
控えめに言って性格が悪いと思う。
そしてその少年、なぜか異世界とやらに興味を持ち、ボロい本の儀式を試し、
――俺と魂が入れ替わったらしい

自分の思惑が成功したことが嬉しいのか、もう一つの魂である俺なんざ目もくれず、自分の器に嬉々として俺を押し込み、あばよ!と捨て台詞を吐いたのだった。
余りにも性格がクソだな…、と再認識する、今は自分の体になってしまっているけども。

痛む尻の穴と足の原因は追及するのは野暮だとして、改めて自分の顔を部屋に備え付けてある鏡で確認した。

今は平凡な顔立ちだが、小さい頃は可愛い可愛いと持て囃された顔立ちが鏡の中に映っている。
しかし髪色も目の色も元の俺とは全く異なり、顔を隠せば別人じゃと誤解されるような出で立ちだった。
黒い髪の短髪に茶色の目と、一般的な色合いだったのが、白髪の長髪に紫の目に変わっておりあまりにもファンタジーの住人ではと疑ってしまった。
ぱっと見なら美少女に見えないこともない、この美少年に入ってた魂、あまりにも性格がクソだけど。

黙ってればいい感じではない?と今の自分を自画自賛していると、部屋の扉からコンコンコンとしたノック音が聞こえる。
思わずそちらに視線をやると、低い落ち着いた声が俺を呼んだ。

「失礼いたします、シュヤマ様、朝の朝食をお持ちしました」
確かシャヤマはこの身体の名前だ、俺の名前と似ても似つかない。
そんなことを考えるや否や開かれる扉。
ここで俺はあれ、もしや俺とても詰んだのでは?と危機感が募る。

ここの主人である今の俺の体の持ち主は、クソ野郎といえどこの家の主。
けれど今の俺は、中身も生活も平々凡々な普通野郎、どう足掻いたってボロが出る。
ぶっちゃけ俺にあの性格は無理だし男に掘られる趣味もない。
性格が突然変化すれば、屋敷の連中も絶対に気づく、つまり。

(待っっって、殺されるとかそういう拷問系に処される可能性大!!)
ぶわりと嫌な汗が背中を伝う。
どうにかしないとと思うも後の祭り、スローモーションのように開かれる扉に視線が釘付けになってしまう。
逃げたとしてもこの痛む体で全力疾走できる気がしないし、部屋の扉も今開かれている扉のみだ。
どうすればー。

「?シュヤマ様?」
「ぁ」
ガラリと食器を押して出てきたのはいつも食事を出している男。
その男は俺の方を見るなり、信じられないとでもいうかのように目を見開く。
やばいこれはー。

「っごめんなさ「マスター!!」……へ?」
バレるだろうから先手必勝とばかりに謝ろうとした瞬間、それより早く男が俺に近寄り手を取った。
あの、ここ一応ベッドの上、と突っ込む間もなく、土足で遠慮なくずいと近寄っていくる顔の良い長躯。
その表情は期待と恍惚に満ちていて、クズ少年の記憶を除いても無表情がデフィだった筈ではと、別人を疑ってしまう。
それくらい、主人、いや、目の前の俺に対する顔がドロリと砂糖水のように甘ったるい。

いや、えっと……なに??
「えっとぉ……?」
「あぁ、申し訳ございません。戻ってきたばかりでしょうに混乱させて……」
「いや、混乱っつーか……、あんた俺が、その……前の奴と違うってわかってるのか……?」
「えぇ、分かりますとも。俺は魂が見れるゴーストタイプのポケモン故、視る事には長けています」
「魂見れるってんなファンタジーな……、ポケモン?」
「はい、ポケモンです」

男が言った一言に再び目を白黒させる。
いや、ポケモンって。
俺の世界の話の中の存在じゃ、と結論を出そうとするも、男の格好を再度認識する。
燕尾服、にしてはダボっとした質感の服装、頭には電球?を模したような謎の飾りがあり、髪色も青みがかった灰色で目も赤色。
一眼でファンタジーの住人だと分かる、分かるのだが。
つい先日まで久しぶりに遊んだレジェンズシリーズに出てくるあのポケモンに酷似していて。

 
俺が答えに差し掛かった事に気配でわかったのだろう、
ヨノワールを人にしたような男―、は恍惚とした笑みをうっそりと怪しげに笑う顔に変え、俺を見つめたのだった。

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