02
「……この少年の容姿が俺に似てんのは元は俺がこの世界で生きるはずの魂だったからで、ここはポケモン世界だと…」
「そうです、マスターは呑み込みが早いですね」
「いや半分混乱してはいるけど…」
恭しく持ってきた食べ物を俺に給餌する男はにっこりと人好きする笑みでスプーンを俺の口元に持ってくる、半強制的に口に持ってこられるから食べるしか選択肢がない。
いや滅茶苦茶旨いのだけれど、状況が状況過ぎて味よりも羞恥心が混ざってしまう。
「けど本来生まれるはずだった魂が逆転してるのは不思議な話だな……」
目の前の男の話を聞く限り、本来俺はポケモン世界に生まれる予定だった魂らしい。
けれどそこに横槍が入り、本来の俺の体にクズ男の魂が入り逆転。
これには神様も焦り、どうにか俺の魂をこちらに呼び戻せれないかと四苦八苦したらしい。
幸い現実世界とこのポケモン世界は密かなところでリンクしており、俺がゲームで使用していたポケモン達は、確かにこの世界で生きて生活していると。
神様の焦りなんぞしらぬと、クズ男は俺がゲームで使っていたポケモン達を無意識に数匹集め、自分の好き勝手に暴れていた所、異世界の存在を知り魂が逆転。
本来生まれるはずだった俺が魂のみ呼ばれて、こうして戻ってきた、…………らしい。
俺にとっては現実世界が生きていた場所だったし、ポケモン世界と呼ばれても少し不安ではあるのだが。
「……これ俺がポケモン達に殺されない?大丈夫?」
「おや、どうしてそんな考えに?」
「いやだってさぁ」
目の前の男…、ヨノワールはきょとんとした顔で俺の顔を覗き込む。
その様子は子供のようで何処か幼さを感じさせた。
「元とは言え俺の体に入っていた魂だろ?俺としてはあんたらの事初対面だし、中身が違うってなったら主として見られない確率が高いんじゃないかって」
「少なくとも、俺は貴方についていきますよ、元の奴についていたのは貴方の魂が此方に戻ってくる可能性を少しでも希望にしていたからですし」
「うぇ」
改めて俺の手を取り熱を持った目で俺を見つめる。
顔がいいってのは得だなおい、と心の中で茶化さないと流されてしまいそうでぐっと理性を保った。
種族特有の大きな手が俺の手と太ももを覆ってすり、と撫でる。
「他の奴らはまぁ知りませんが、俺みたいなのは幾人か知っています。希望が見いだせない中、自分のトレーナーが戻ってきたと知れば喜ぶ奴は多いでしょう。元の奴からは俺達との繋がり何か微塵も見られませんでしたが、俺達は貴方を心の中、夢の中で知っていたので」
「スピリチュアルすぎない……?んなふわふわした理由で俺の事待ってたの?」
「変ですか?」
「変というか……、だって必ず俺が帰ってくるなんて保障はないのに」
「大好きな主人の為に少しでも可能性を見いだせれば、待っているのが俺達ポケモンという生き物です」
赤色の目が俺を見る。
「俺達はトレーナーと心を通わせれば、必ずトレーナーの言う事を聞いてしまいます、それが悪である行為だとしても。愛情には愛情で返す生き物なんです」
「……まぁ今はそれだけ覚えていればいいですよ」
寂しげに笑ったヨノワールは、俺の頭を撫でた後、ベットから降りる。
少し居住まいを正して元通りになったヨノワールは改めてにっこりと俺の事を見た。
食器も既に元に戻され、ベットには俺だけが残されている。
「さてマスター、戻ってきた祝いに皆に知らせたい思いはあるのですが、俺は貴方を休ませたい」
「何か、俺にやってほしい事はありますか?」
懇願するような目で俺を見たヨノワールに一瞬狼狽えた。
……とても真面目な雰囲気で、この空気を壊したくないのだが、今の俺が言いたいのは一つだけ。
「……お風呂ってある?あと出来れば連れて行ってほしい……、です」
足に力は入らないし体は心なしかベタベタしている。
長髪に慣れていないから短くもしたいし、何なら髪色とかも変えたい、確か目の色とか色々変えられなかったっけか。
呑気にそんなことを考えて、ヨノワールの方を見る。
ヨノワールは俺の言ったことに目を真ん丸とさせて、愛おしそうに眼を細めさせた。
「……仰せのままに」