窓の向こうでは、北風がびゅうびゅうと音を立てながら吹いている。天気予報だと、今日は雪が降るらしい。でも、風邪で熱を出し、ベッドに横になっているわたしにはそんなの関係ない。
体調不良でも、テレビは何となく点けてしまう。朝のワイドショーが終わって、お昼のニュース番組がやる頃、施錠していたはずの玄関ドアが開いた。誰が来たのかなんて考えなくても分かる。
「おう! 大丈夫かよ」
「帰って来てくれたんだ」
「オメーが連絡寄越したからだろ」
「ありがとう」
彼は両手に持っていた買い物袋をダイニングテーブルに置くと、ガサガサと色々なものを取り出していく。
「ほら、これデコに貼ってろ」
「きもちい……」
「薬はメシ食ってからだな」
「うん」
「ちょっと待ってろよ」
そう言ってキッチンのほうへ向かった彼は、これから何か作ってくれるらしく、寝室にいるわたしのほうには、冷蔵庫をバタバタと開閉する音と、そのうち包丁で何かを刻む音が聞こえてきた。何が出来上がるのか、心待ちにしながら耳を澄ます。テレビでもちょうど、料理番組がやっている。
「……おっし、できた! なまえ、起きれるか?」
それから少しして、いい匂いと共に彼の呼ぶ声が聞こえてきて、熱を持った体を起こす。眠気と寒気で頭がぼーっとする。のそのそとダイニングへ向かうと、テーブルの上には彼特製の雑炊が湯気を立てて待っていた。聞けば、昨日の残りの中華スープをベースにしたようで、かき混ぜたふわふわの玉子が足され、丁寧に刻んだねぎも乗せられている。
「わ、美味しそう。いただきます」
ふうふう、としてから一口。優しい味がした。風邪を引いたら、やっぱりお粥とか雑炊って言うけど、彼にもそういう一般的な考えがあるのだと思うと、何だか安心する。
「何ニヤけてんだ? 気持ち悪ィ」
「だって美味しいんだもん」
「はあ? こんなんで?」
すると彼の昔話が始まり、ガキの頃部屋住みをしてたから料理が得意になったんだ、と語った。雑炊よりもっといいもん食わせてやるぞ、だって。
「楽しみにしてるからね」
「おう。冷蔵庫見たら何もねーから買い物行ってくる。何か欲しいモンは?」
「え、戻らなくて大丈夫?」
「今日は家当番してやるよ」
ニッと得意げに笑って、買い物袋を持つ姿が様になっている。欲しいものなんかないよ。あなたの優しさに触れて、意外な一面をまた知れたから。
2017-02-05
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