恋の駆け引き
最近、どこかに出歩くと必ず青雉に出会す。そして変わらない下らない社交辞令を私に向けるが、私の心に染み渡るどころか嫌気が差し言い終わる前に踵を返し奴に背を向けた。奴の社交辞令は私ではない女性にも向けられていることを知っていたからなのか、しかし腹が煮えくり立つような怒りは目の前の奴にやつあたりしてしまいそうでその場を離れようとした。
「あららら、どうして帰っちゃうの」
「ついてくるな、お前の顔を見ると虫唾が走る」
歩いても歩いても、青雉は私の背を追ってついてくる。今日に限って、何故ついてくるのか。
「俺が他の女の子口説いてるの、そんなに嫌なら嫌だって言えばいいじゃない」
ドキリと、心臓が掴まれたような感覚に陥る。自然と足が止まり奴を睨み付けた。
「まるで、私が貴様を好いているように聞こえるが」
「あらら、違った?」
「・・・気分が悪い、今すぐ消えろ」
軟派な男に碌な人間はいない。
(なのに・・・)
何故、私はこの男を好いてしまったのか。相手は海軍大将、私は只の科学者の下っ端。身分の違いが私の想いを心の奥深くに沈めていった。
「あらら、俺の作戦もしかして失敗か」
「は、」
「どうやったらなまえ、俺のこと好きになる?」
「なっ・・・!?」
直球すぎる言葉に、うっかり私は顔を真っ赤にさせてしまう。気が付いたときには青雉は嬉しそうに笑った。
「身分なんて、気にならないくらい夢中にさせてあげようじゃないの」