みつけて、わたしを


海軍本部マリンフォード、この世界中探してもここ程安全な場所はないだろうこの場所で私はこじんまりとしたバーのカウンター内の片隅で安酒を煽る。まずい、と呟きながらも口に含んだ瞬間のアルコールの感覚に心地良さを感じる。海兵達が多く住む海軍本部とはいえ、酒を提供できる場所はいくつかあるがこの店は前の店主がこの島を出る、という理由で私が譲り受けた。
まぁしかし、誰も来ない。暇である。
前の店主が弾いていたピアノの前に座り、鍵盤をゆっくり滑らせる。
過去に色んな酒場で歌った経験があるが、今や誰も私の存在を覚えている人は果たしているのかあやしい。
カラン、と入店のベルでピアノを叩く指が止まる。いらっしゃい、と扉へ目を向けるとそこには店の証明でボンヤリしているはずなのに派手だと分かるストライプ柄のスーツを着た大柄の男。見間違えでなければ、その男はこのマリンフォードでそこそこのお偉いさんだ。

「あらま、大将様いらっしゃい」
「お邪魔するよォ」

カウンターに戻る前に、大将黄猿のジャケットを預かりハンガーを通してハンガーラックに掛ける。それにしても大きいなぁと、カウンターに戻り、つめしぼを黄猿に差し出すとやはり手も大きい。

「こんな辺鄙な店、よく見つけられましたね」
「綺麗な歌が聞こえたもんでねェ〜、バーボンのロック」
「あはは、聞かれてましたか⋯いやはやお恥ずかしい」

あぁ、黄猿さん超かっこいいなぁ⋯なんて口が裂けても言えない。マリンフォードから出られないのはこの人に惚れたが故だ、過去に酒場で見かけたこの人を一目見た時から憧れていた。丸く凍らせた氷でグラスを冷やし、バーボンをダブルで注ぐが手元が狂いそうだ、まさか会えるとは思ってなかった。

「何年も探し回ってねェ〜やっと見つけられたよォ〜」
「すみません⋯前の店主は故郷の西の海に戻ってしまって私は2代目なんですよ」
「違うよォ〜君を探してたんだよォ」
「⋯へ?」

出したグラスの中身は一瞬で空になる、そして目線は私に向けられる。それだけで心臓がドキドキしてしまう、黄猿さんは一体何を言っているんだろうと頭で未だに理解できない。

「わっしも、随分前に君の歌ってる姿を見て一目惚れしてねェ。でもある時から全く君を酒場で見かけなくなってねェ」
「あ〜⋯えっ、ひと、めぼれ⋯って」

優しげな表情なのに尋問を受けている心地だ。それにはちゃんとした理由がある、弁明させて欲しいのに言葉の端々に少しばかり憤りを感じるのは気のせいだろうか。やばい、なんて言おう。

「だって黄猿さんの好みはパツキンのナイスバディの美女だって、クザンさんが⋯」
「んん〜⋯?なんでそこでアイツの名前が出るんだァい?」
「クザンさんたまにいらっしゃるんで、ってあれもうおかえりで⋯ってなんでカウンター⋯え!?」

それはもう光の速さで、扉前にあった立て看板はCLOSEにされ、鍵を締められる始末。そして何故か彼は目の前にいるではないか。

「わっしがどれだけ君のこと想ってるか思い知るといいよォ〜」
「ひぇっ」