(タイトルなし)


「なァんで、コイツが俺の部屋で寝てんのかなァ…」

トサリ…衣服がかりが詰め込まれた肩掛けかばんが床に落ち間の抜けた音をたてた。

学校が長期の休みに入り部活も一週間の休み。
疲れた体で実家へと帰省した荒北の目に飛び込んできたのは自分の部屋のベッドで眠りこける名前の姿だった。

(いや、確かに今日帰ることはメールで教えてたけどォ!!)
どこから入った!?親は仕事でいないし妹も遊びに行っていまは誰も家に居ないとメールが来ていたし、玄関は自分が持っている鍵で開けて入ったのだから密室のはずだ。

ふと風が荒北の髪を揺らした。窓の方を見ればカーテンがふわりと風に舞う。よく見ればベランダに出るための窓が5センチほど空いたまま。
……そうか、侵入ルートは此処か!!

(この馬鹿、また窓から入ってきやがったのか。)

名前と荒北の部屋は隣接しているのでベランダから飛び移れば自由に部屋の行き来が出来る。小学校時代は玄関を使って行き来するのが面倒という理由でベランダが玄関の役割を果たしていた。

流石にお互いにいい年齢だし、なにより一歩間違えば大けがするからやめろと言っているのに。
説教したいがこうも気持ちよさそうに眠られていては叩き起こす気すら起きない。ガリガリと乱雑に頭をかきながらドカリとベッドの前に腰を下ろした荒北はそっと気配を殺し眠る名前の顔を覗き込んだ。


「このバカチャンが…」
人の気も知らないで熟睡しやがって。
甘いような匂い。シャンプーか、それとも何か香水でもつけているのだろうか。鼻を擽るその匂いにゴクリと喉が鳴る。
まるで御預けを食らった犬の気分だ。確かに周囲の人間からは荒北は動物に例えると狼か犬だよね、とよく言われるがあくまで例えられたらであって狼にも犬にもなるつもりはさらさらない。


「無防備に寝てんじゃねェよ。襲っちまうぞ」

早く起きてくれ。
じゃないと欲しくなる。

理性は駄目だと制止を掛けるが身体と心は欲に忠実。起きてないお前が悪いと塞いだ唇。
柔らかい。

初めてだったのだろうか。
いや、自分が知っている情報上ははじめてのはず。

「なァ、早く起きろって…」
足りないんだよ、と口にするが名前に起きる気配はなく、苦い思いをするばかり。


「好き、だ…」
顔を覆ってやっと出た言葉も彼女に届かない。


再執筆(20160411)
初執筆(20150625)


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