ゆめにっき
私は結構長めの夢を見る方なんですけど、めちゃくちゃ夢小説みたいな夢を見た時に書き留めたやつを(ぐちゃぐちゃのままですけど)、おいときます。完全に「わたし」の人格が主張しているので苦手な人は見ないほうがいいです。
>>なんかしらんが九条天のライブ前1週間の食事を管理することになった
「じゃあそういうことで。よろしく」
「は、はあ……」
ドームライブを1週間後に控えたTRIGGER、その九条天の食事管理を任されることになった。簡単に言ってくれるけど、私といえば冷や汗が止まらない。18歳の男の子の1日の摂取カロリーって幾つだっけ、アスリートの試合前の食事ってどんなのだっけ、PFC比とかどうするんだっけ……大して詳しくない上、あまりに自信のない分野の仕事すぎて涙が出そう。しかも料理も人に食べさせるほど自信がない。引き受けなければ良かった……
とりあえず分厚い食品成分表を引きずって開き、献立を立てる。っていうか引いても字が細かくて読めなすぎて泣きそう。PFCだけ守ってればいい?ビタミンほか栄養素の数値が目を凝らせば凝らすほどポロポロと逃げていってげんなりした。九条天の食生活がかかっているというのにこのザマ!!埋めたはずの表には次々漏れが見つかるし、埋めたそばからまた文字が逃げ出す。やっぱり断ればよかった、こんなのやったことないもん……こんなの何が正解かわからない記述試験だもん……
唸りながらなんとか立てて、唯一役に立ったのがアスリートが試合の前に炭水化物をたくさん摂取するとかいうカーボローディングの要素。公演時間が長いから、バテずにベストパフォーマンスを成し遂げるにはたぶん、必要な気がする。米大事、あと肉も魚も野菜も大事……たぶん……
「と、いうことで1週間分の食事計画がこちらです……」
「貸して」
九条天は明らかにピリピリしていた。ライブ1週間前、あっちもこっちも仕上げて完成度を上げて詰められるところは詰めたい時期なのだから当然だと思う。完璧主義の彼が、自分だけレッスンを抜けてここに座らされて、ほかの2人に遅れをとりたくないと思っているのはその顔と態度ではっきりわかる。そうだよね、楽と龍がいて、一緒に立つ最高のステージならいつも以上に完璧な自分でいたいよね……レッスンの途中で抜け出して来て汗だけ拭いてとりあえず座っている、と言った様子なので私はなる早でこの仕事を終わらせ九条天を愛するふたりの元に帰さんと決意した。
「あ、あの!1日目はご飯と鶏胸肉の」
「静かにして」
「あうっはい……」
パラ、パラと紙をめくり、険しい視線が上から下まで確認する。学生実験の結果をグラフにして先生に見てもらう時くらい緊張する(学生実験では値がまずいと超絶めんどくさい実験をいちからやり直しさせられるから、どうにかしようと必死こいて値を調整していたダメ学生である)……
「ねえ、これどういうこと?」
「どっどれでしょう!?」
「この馬鹿みたいな量、ボクに食べさせるつもり?龍でなく?ボクに?半分に減らして」
「い!一応適正量なんですが……」
「何の!?体作ってる時でもこんな量食べたことないよ」
「カーボローディングが必要かと思って、炭水化物を摂取エネルギーの7割弱設定ににしてみたんですが……」
「……キミはボクを何だと思っているの?」
九条天の言葉に馬鹿にしたような雰囲気がなくただただ冷たい声音だったので私は静かに九条天を見た。
「ボクはアスリートじゃない。アイドルだよ」
「……アイドルだって人間です。食べなければ、死んでしまう」
「キミは何も分かってない」
九条天は顔を伏せて、その肩が震えた。泣いてるのではなく、怒っているのだとはっきりわかる。丸めた背中から立ちのぼる何か、そして長い前髪の間からギラギラと両の目が私を睨む。指の関節が白くなるほど右手を握りしめ、思いっきり机を叩いた。
「1週間後に!ボクは50000人のファンの前に立つ!ボクに会うために毎日を生きてくれるファンに、みっともない姿を見せるわけにはいかない!」
「九条さんは、どうして私が呼ばれたのか分かってません!そうやって、ライブの前にいつも馬鹿みたいに食事の量を減らして、そうやって無理をして、本番に挑もうとするから……ほかの2人は呼ばれなかったのにあなただけ、こんな羽目になるんです」
「何だって?」
「自覚を持ってください。あなたは……プロです」
「ボクにプロ意識を説くの?キミが?」
九条天は冷めた微笑を浮かべ、今度こそ嘲笑した。柔らかい色の瞳は激しい怒りに燃え、私は負けじとそれを見返した。プロ意識に殉じることがどれほど愚かか、今の九条天には伝わらないだろう。それでも、私は言わずにはいられなかった。
九条天のからだは、18歳の男の人からかけ離れている……と思う。それが、「余計な筋肉も脂肪もつけないように」という愚かな努力の成果だと知った日の、目の前が眩むような怒りと悲しみを私は一生忘れられない。死人の上で踊るダンスがそれほど価値のあるものか、私にはわからない。私はゼロをしらない。それでも、九条天が自身の人間としての幸せ全部投げ打ってでも、健全な肉体の成長を抑えつけてでも、越える価値があるとはどうしても思えない。
TRIGGERの3人が見せるパフォーマンスを知ってしまった。それを棄てて、九条天がゼロを超えることはどれほどの意味があるのか。大事なものをいくつ手放してでも、九条天がゼロを越えようとする理由がある。私はまだその理由をしらない。
「私は九条さんがどうしてゼロとかいう不確かなものを超えることにそんなにこだわるのかしらないし、教えてもらってません。だから、あなたの言うところのプロ意識の欠けた凡人として、あなたの理想をいくらでも否定したいと思う。プロ意識に殉じようとするあなたは愚かだ」
「……それが、キミのこどもは守られるものだとかいう崇高な考え?……馬鹿にしないで」
「こどもは守られるべきだし、あなたがどこぞのおじさんの後悔を晴らしてあげることの意義も、あまり感じられません」
「いい加減にして!ボクは、キミとは違う。キミと違って、プロだ」
九条天に人間でいてほしい。ゼロとかいうわけのわからない存在をひとりで超えていかないで欲しい。もしどうしても超えるのなら、ほかの2人を連れて行ってほしい。
「プロ意識なんて1ミリもないです。不確かなトップアイドルという存在を追う君たちを、ただ見ているだけの人間なのに」
九条天が長い前髪をくしゃりと掴んで、泣きそうに顔を歪めた。九条天が、ライブを1週間後に控えたアイドルだということを思い出した私はギョッとして椅子を蹴倒して立ち上がる。
「九条さん」
「ボクは、こんなことを言いたいわけじゃないのに……」
「九条さん……」
九条天は、わかり合おうとしているらしかった。私の方に九条天とわかりあおうという気は一切なく、ただ自分の主張を通さんとばかり考えていたので、九条天が傷つこうと理解できない私の主張を跳ね除けようと、そういうものとして受け止めるつもりだった。その若くてやさしい葛藤に私は何も言えなくなる。
「九条さん」
「……」
「ご飯、お茶碗1杯、それを朝と昼だけにしましょう。夜はなし。そのかわり、温野菜と脂身の少ない肉とお魚たくさん食べましょう。それで、夜ごはんが遅くなった日はまた適宜ちょっとにしましょう。それからあんまり冷たくないお水、しっかり飲んでそれで1週間やる。でも、ライブが終わったらまたしっかりごはん食べる。ね、そうしましょう」
九条天がのろのろと顔を上げた。そうだね、といつもより力ない声が返事をした。18歳の少年の、譲歩の仕方にしてはあまりに大人びていて私は本当に泣きたかった。もっとわがままを言えばいいのに。死にたくない、離れたくない、もっと食べたい、幸せになりたい、いくらでも願いは尽きないだろう。
九条天のあたたかくて重たい体を感じながら、本当に夢でよかったと涙が出る。ただでさえ、彼には不安の影が付き纏っているのに、こんなに辛い思いをする必要はない。偽物の九条天の背中をさすって、私はただただ、もっといろんなことを勉強しておけばよかったと後悔するばかりだった。しかしながら、勉強していたからといって、より良い答えが出せたかどうかは不確かだけども。
>>本当に夢で良かった、夢でさえ天くんが泣いてるのつらい。「ボクはアスリートじゃなくてアイドルだよ」「ボクにプロ意識を説くの?キミが?」「ボクは、こんなことを言いたいわけじゃないのに……」あたりは我が夢ながらかなり自分の書く夢小説ぢからが強いな……と感心しました。でも、本当にゼロとか言う不確かな存在を天くんが超えることに価値はあるのか?と本編完走後ずっとモヤモヤしてて、また天くんの身長体重セリフなどから身体のことすごく不健全な在り方をしてるなと思っていて、その辺ウンウンいいながら文字にしました。ほかの夢日記はもっと散々な文面なのでまた見つけたら持ってきます。毛利とかね……
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