ゆめにっき

>>ロングスリーパーが15時間寝た時に見た夢。長時間すぎる睡眠はやめた方がいいです。脱水とかこわいし……
>>一味から跳躍の能力を期待されていたので、ホプホプの実の能力?的な感じだったのだと思う。恋はホップステップジャンプ。

昔旅行で訪れた、南アジアのお城のようなお寺のような、石造の廊下が無限に広がっている。一味全員で全力疾走していた。離散していない状態でのこれは割と珍しいシチュエーションでないか?壁には火の灯りが灯っていて真っ暗じゃないけど、この先どうなっているのかまでははっきり見えない。いったいどこまで走ればいいんだ。全敵KOするまでか。

宮殿なのであちこち煌びやかな装飾がされていて、ナミさんは「あの壁に貼り付いてる石だけで何ベリー、角の壺は何ベリー……」とぶつぶつ言っている。チャンスがあれば石のひとつふたつ剥がして献上したい。が、現状かなり厳しいだろう。私の腕には木製の手枷がついている。なぜか私ひとりだけ!海楼石じゃないだけよかった。

「お前ら!ちゃんと名前ちゃんをお守りしろよ!!」
サンジさんがなんだかヤバげな敵を引きつけて、廊下を右に曲がっていった。

「サンジさーーん!!」
「名前ちゃ〜ん♡おれ頑張ってきま〜す♡」
乙女のナイトを自称する頼もしい人が真っ先に離脱した!半泣きで呼ぶもすでにサンジさんの姿は見えず、何か陶器らしきものを蹴り壊した音と元気な声だけが聞こえた。別に愛情の応酬をしたくて呼びかけたのではないが、サンジさんはすごく嬉しそうだった。

「で、どうするのよ!まだ4体もいるんだけど」
「おれがあいつをやる!」
「誰もルフィさんからボスを取ろうなんて思ってませんよ!」
「ヒィーッなんか毒液ぽいの垂れてる!!」
「危ねェ!被ったらひとたまりもないぞ」
敵の体から床に滴った液体はみるみるうちに石の床に穴を開けて、私たちは顔を引きつらせた。サンジさんがひとり引き受けて、のしのし追いかけてくるヤバげな敵は残り4人。一際デカいボス格を船長が相手する気満々で、あと3つはどうにか分担しなければならない。

私の両手は大きな手枷で結ばれて、そこから伸びる鎖の先には重たいおもりがついていた。走りにくくて仕方ない。おもりを引きずって走るので、歴史的価値のありそうな建物の床を傷つけまくっているし、どう見てもこれから始まるマジ戦闘の足手纏いにしかならない。

「名前はどうする!?跳べるにしたって、このままじゃあ……」
「どうしよう!?とりあえず、ルフィについてくのは嫌!」
「なんでだよ!!おれはお前の船長だぞ!」
先頭を走っていたルフィが振り向いて吠える。

「だって、絶対”ヤバい”でしょお〜〜!?」
「ヤバくねェ!」
ルフィが怒るその間にも、一味最後尾を務めるゾロがバッタバッタと敵を薙ぎ倒していく。このまま全員やってくれないか?と期待したが、そううまくいかず。毒液の敵は大きな刃を振りかぶり、ゾロが力技で受け止めた。刃の先から毒液が滴り、チョッパーが悲鳴をあげた。

こう着状態、開けた土地のない室内戦闘の邪魔をしない為に私はさっさと逃げ出した。ゾロには最初から頼る予定もなかったし。ゾロにはチョッパーがついてるし。ゾロはチョッパーがだいすき。

「おい、おれは抜けるぞ!」
「お、おれも!」
「いいよ!ゾロについてく気もなかったもん!」
「叩き斬られてェのか?」
「ひぃぃ」
ゾロが、すごい敵と戦いながら私を気遣うのは絶対無理だと思う。普通に、私の精神が。思い出されるのは過去の戦闘の数々、頭によぎったのはパンクハザード。今回は天井の低い室内だし、よりよって私はおもし付きだし、ゾロだってギャアギャアうるさい私よりチョッパーが付いてきた方が100倍嬉しいに決まってる。ゾロはチョッパーがだいすき。

「じゃあ名前はこっちね」
「はい♡おねえさま♡」
「おれもかよっ!?」
ハナハナで回収された私とウソップはロビンさまのお供コースが決まった。心強すぎ!勝ち確!最強スナイパーのウソランド大好き!ロビンおねえさま大好き!ロビンが私とウソップを連れて行くということは、探索アンド戦闘コース間違いなし。ここはなんだか遺跡っぽい雰囲気もあるし、廊下を飾る壺や置物も古めかしくお金だけじゃない価値がありそうだから、何か心当たりがあるのかもしれない。希望は神ふたりによる早期戦闘終了のちゆっくり探検ツアーだが、もしかしたら探索戦闘同時進行コースもありうるかもしれない。どちらにせよ、おもりのついたままでは足手纏いにしかならない。どうしたものか。

「名前!」
「うお、船長!」
ハナハナの腕に運ばれる私にルフィが急接近する。そして険しい顔で私の両腕の手枷を見ると、「えい」の一言で破壊した。木っ端微塵だ。す、すげーー!!さすがその首にかけられた懸賞金は30億!ところで経営難のクロスギルドって、懸賞金を払えるのだろうか?なぜ資金繰りに苦労してそうなのにその事業を選んだの?自転車操業なの?感動するわたしをよそにルフィは「これで跳べるな!よし、行こう」と手枷のなくなった私の手首を掴む。

「い、いやです」
「いやじゃない!!」
「いやです!私、おねえさまたちと一緒に行くので、船長はどうぞボスレイドに……」
「ごちゃごちゃうるせェ!いくぞ」
「ィヤーーーッ」
ハナハナの腕からゴムの腕に引き渡され、どんどんロビンとウソップが、比較的安全コースが、遠ざかる。ナミさんが「まあ……頑張りなさいよ」と言ってフランキーと一緒に左の路地を曲がる。ナミさんは隙あらばこの宮殿のお宝を回収せんといった顔なので、フランキーはお目付役を頑張ってほしい。宝飾品の根こそぎ狩られた貧乏ったらしい宮殿に苦言を呈して止めてくれそうなのはフィールドは違えど大工のフランキーしかいない。

「じゃあ私たちはお先に……ヨホホ!」
「……武運を祈っておるからな……」
「ひどい!ひどいよ〜!」
ブルックジンベエコンビもそそくさと脇道に逸れる。正直ロビンがダメならブルックについて行きたかった!ヨミヨミと剣技、それに私のジャンプが揃えば、こういう迷宮的屋内戦は割と勝ち確である(と勝手に私は思っている)。「光栄です!ではまた今度!」声だけ残してブルックがみるみる走り去る。鬼!骸骨!死んで骨だけ!かわいい親分は良心の呵責か目を合わせてさえくれなかった。ひどい!

「よし、名前。おれたちもいくぞ」
「ギィーーッヤダーーッ!」
見てる分には強くて頼もしい船長だが、ふたりきりで戦闘フォローしなくちゃいけないとなれば、ほんと勘弁してほしい。ルフィは私のフォローなんて期待してないだろうけど体力温存してほしいし、私だって接近する敵から逃れるための脚くらいにはなれるのだ。ゴムの腕を引き剥がして今度は船長を私が背負う。
「名前!」
後ろの方からギュルギュルと刃の回る音がする。チェンソーだろうか?痛いのはご勘弁いただきたい!

「跳びます、捕まって!」
「よし行け!」
力をためて、ホップステップ、からの特大ジャンプ!ルフィが存分に力を発揮できるような広くて立派なバトルフィールドまで運ぶのが私の仕事だ。着地のために両脚に力を込めて、背後を確認する。距離は十分稼げただろう。

「こら、後ろ見んな!」
「ヒイ」
見なきゃよかった!おどろおどろしい敵が両手をチェンソーに変えて追ってくる姿なんて、見た途端に足が竦んでしまう。ルフィはぐるぐる巻きつけた腕で私の顔を無理やり前に向かせる。降りるつもりはないらしい。
「覚悟決めろ。な?後はおれがどうにかしてやるから」
「覚悟なんて……」
とっくに決まってる。あなたがこんなところで切り刻まれて死ぬタマじゃないってことぐらい、わかってる。

「覚悟なんて、するまでもないよね」
「そうか」
「だってルフィ、四皇倒して他のライバル蹴散らして海賊王になるんだもんね。私だって……こんなところで止まってられないよ」
「そうか!」
耳にあたたかい息がかかる。こんなに走ったのにまだまだ走れる。体は軽くて、地面を少し蹴っただけで軽やかに弾む。私はまだまだ跳べる。

「よし、もう1回跳べ!」
「まかせて船長!」
足に力を込めて、天井にぶつからないように前に、前に、跳ぶ。命の危機なんてちっとも感じてないみたいなルフィの笑い声が耳に。




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