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新たな春を歓迎するような青空。通学路を彩る桜。
今日は雷門中の入学式だ。
新入生である私も例外ではなく、真新しい制服を身にまとっていた。
雷門中といえば10年前のイナズマジャパンからは雷門中サッカー部所属のメンバーが多く選出され、その後も多くの有名選手を排出してきた、いわばサッカー名門校ともいえる。
とは言っても、雷門中サッカー部は男子サッカーの活動が主で、女子サッカーはそこまで活発という訳ではない。
なので、女である私が選手としてサッカーがやりたいのであれば、雷門中に入学する、というのは悪手ではあったが、私の目的はそれじゃない。
だからこそ雷門中に入学することを選んだのだから。
見慣れた紺色を見かけて思わず駆け寄る。私の存在に気づいた彼は、「げっ」と咄嗟に言葉を零して、そのまま門を抜けようとする。
「こ〜ら!京介ってば。無視するなよ」
「…春咲。学校では話しかけるなつっただろ」
確かに言われた。そう言われたけど、それを聞く義理はない。
それに彼の兄である優一は、むしろ「進学しても京介と仲良くしてやってね」というような優しい心の持ち主だ。
彼の気持ちを汲むというわけではないが、友人としては一人で事を成そうとする此奴を放っておくなんてことはできそうにないわけだ。
「もう、クールぶっちゃって」
そういうところは中学生の女子にはモテそうではあるけれど。いや、実際モテるだろうな。うん、同じ小学校に通っていた私が言うんだから間違いない。
うっとおしそうにする剣城に、そう腕でつつこうとすれば、慣れたように避ける。私は思わず転びそうになるが、思わず彼の学ランを掴んでとどまった。
「ね、本当にやるの?」
「ああ」
剣城は私の腕を振り払うが、負けじと両腕で剣城の腕を掴めば、「まだ何か用があるのか」と振り向く。
「京介にできるの?」
「できるさ、そのためにここに来たんだ」
強い意志を持った眼に怯まない態度を見れば、決意が揺らぐことは無いだろうと判断して、腕を離した。
「そっか。……まぁ、頑張ってね」
バツが悪そうにしながらも、やめる気の無いことはわかっていた。剣城はそのままグラウンドの方へ向かう。
見送ることしか出来ない。止める資格もない。
それほどに、彼にとって兄とは大きい存在なんだと知っていたから。
追いかけはしなかった。