だって福利厚生がいいって!


仕事を選ぶ上で大事なものは何だろうか。
高望みは出来ないけれど、福利厚生はしっかりしていた方がいい。
そして正社員なら尚良。私としては、そこにこだわりがある。…という訳では無いが、固定給の方が安定しているし、派遣やアルバイトなんかより生活面では安心できるだろう。
もちろんこれに関しては例外もあるだろうけれど。
実際この職場の福利厚生は手厚いし、給料だっていいし、なんなら定時退社したって咎められない。残業すれば残業代もつくし、どちらかと言えばホワイト形態な仕事だと思う。
そう、やってる事がブラックでなければ。

「志保〜、もう上がろうよ、5時だよ!」
「先にあがりたいなら上がってていいから。私はまだやりたいことがあるの。」
「でもさぁ…」

自分の方が年上とはいえ、自分より務めて長い先輩が仕事をしているというのに先に帰るのはいかがなものか。
新入社員とかならともかく、私はもう務めて何年か経っているわけで、仕事のあれこれも理解しているわけだ。残ってやることがない訳では無い。

「もー、わかってて言ってるの?」

そう言いながら志保と自分の分の珈琲を淹れて志保の机に置き、自分の席に座る。

「もうタイムカードは切ったんじゃなかったの?」
「まあね。でも明美さん、心配してたよ。」
「そう。」

その言葉に志保は溜息を吐き、余計なことを。と呟いた。
ハンガーにかけられた上着と志保の鞄を取り上げて部屋を出ようとすれば、志保もすかさず腰を上げる。隙を見て志保のタイムカードを切れば、呆れた表情を浮かべた。
とはいえ、志保のタイムカードは私のタイムカードと違って形だけでしかないが。

「研究行き詰ってるんでしょ?たまには息抜きしないと。」
「ちょっと。」
「ほらほら。」

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