人は必死に知らないふりをする
クリスマス休暇が終れば、N.E.W.T試験(通称イモリ)に向けたテスト対策が授業と平行に始まる。イモリを取っている人はそれなりにその分野を生かす仕事に就くわけだから、授業の難易度も上がっていく。テストが終ればすぐに就活が始まるわけで、卒業まで私たちに休む時間はない。
私もキャシーも、毎日必死に課題を仕上げている。勿論、あのリドルくんも例外ではなく。いつもより余裕がなさそうで、私を見かけても今までのように絡むことは少なくなって行った。すれ違えば挨拶を交わす程度だ。

「さみしいのー?」

キャシーの言葉にハテナを浮かべる。

「あんた、最近スリザリン見てはため息ついてばっかよ」
「…え。」

くすくす、と笑うキャシーに目を瞬かせる。呆然とする私にキャシーは小さく肩を上げ、皿に取り分け昼食を食べ始めた。

「え、ちょっとキャシー、勘違いしないでよね!」
「なにをー?」
「だから!私別にリドル君好きじゃないし!」
「だれも、リドルなんていってないわ」

ふふ、と笑うキャシーに頭をかかえる。別にリドルくんが嫌いなわけじゃないんだ。自分勝手だし、性格は悪いけど。だからってこの気持ちが好きかって聞かれるとわからないし…。
首にあるチョーカーに手を触れれば、大広間を踊った2人きりのクリスマスがチラリと頭をよぎる。

「もー早く食べなさいよ、次地下なんだから」

ぶんぶんと思わず頭を振る私に、キャシーは呆れたように笑う。
その言葉に次の授業は魔法薬学か、と課題の仕上がり具合を思い出す。提出は来週まで、あとは最後の締めを書くだけだし今日中に出せるだろう。
よし、と意気込んで私は昼食に意識を移した。


(あいみすゆー?)
(考えれば考えるほど、)
katharsis