神様は先を歩き続ける
「リドルくん」とスリザリンの寮席に座った彼に声をかければ、ああと少し目を細め小さく微笑む。
「あっち、いこうか」
「あ、うん」
リドルくんは隣の男子に後で、と一言言うと私の横に並び歩き出す。
「どうしたの」
「えっとね、内定。きて」
報告、に。と段々声が小さくなる。よく考えたら何の報告だ、とキャシーと自分を殴りたくなる。
「おめでとう」
やっぱり僕の言った通りだね、と笑うリドルくんにそうだね、と私も笑う。そしてわずかな沈黙。
「そういえば、リドルくん…魔法省の推薦蹴ったってきいたけど」
何の気なしに聞いた私の問いに、リドルくんはあー、と言葉を濁す。どうやら少し言いにくいことらしい。私が魔法省に入ろうとしていたなんてことなら、気にしなくていいのだけれど。
暫く顎に手を当てて、悩んでいたリドル君だったがまあいいか、と小さく呟き私を見やる。
「実は、さ。ホグワーツの教員に就けるんだ。僕」
初めて見るその笑顔は、とても嬉しそうで。彼は、本当にホグワーツが好きなのだ、とよくわかる。
「卒業するまで言うなって言われたから、皆には秘密にしてくれるかい?」
実績を残した魔法使いが初めて就くことができるその立場に、卒業後すぐに就くのだからそれはそれは素晴らしいことだ。だからこそ、そう簡単に話せないのだろう。
その言葉に、うんと頷きおめでとうと返せばありがとうと笑う彼。
私は笑えていただろうか。
それじゃあ、と席に戻っていく彼がとても遠く感じた。元から遠かった筈なのに。
どうして、こんなにも私は心が曇っているのだろう。自分で自分がわからなかった。
(どんとあんだーすたん!)
(わからないよ)