人は神を見ることしかできないのか
あっという間にやってきた卒業式。教員の一言に、生徒代表はもちろん。
「トム=リドル」
壇上にあがるリドルくんに、下級生は号泣。同級生と涙を流す。教師が泣いていないのは、きっと皆知っているからだろう。
「僕にとって、この7年間はかけがえのないものでした」
リドルくんの声が大きく響く。ぐずぐずと泣く下級生が腹立たしい。貴方達はまた会えるというのに。
「私事ではありますが、最後に一つ報告があります。僕は来年度から、ここホグワーツにて、教職に就くことになりました」
しん、と静まる大広間。
そして次の瞬間、また大きな音の波が大広間に響き渡る。嬉し泣き、驚き。お辞儀をして列に戻るリドルくんに同寮生は初耳だ、と小さくリドルくんをしばく。言ってなかったんだ、と笑うリドルくん。ああ、遠かったんだ。今更だ。本当に今更だった。
「キャシー、また連絡するね」
卒業式が終われば、皆が涙を流し友に別れを告げる。私も例外なく、キャシーに別れを告げる。でも私たちに涙はない。どうせまた直ぐに連絡を取り合うだろう。
「…トムには?」
キャシーが人に囲まれるリドルくんを見やる。リドルくんが見えないほどの人集り。私はキャシーに小さく笑い、いいのと呟く。キャシーがそう、と苦々しげに笑う様子に私は知らないふりをした。
さようなら。ホグワーツ。
さようなら。リドルくん。
卒業生のみが特別に今日だけ許された、ホグワーツからの最初で最後の姿くらましで、私は思い出の詰まったホグワーツにさようならをした。
(ばいばい)
(さようなら)