なんなのこの子
「蛍くん!」

おはよう!と学校で見かけたら僕に真っ先に挨拶をするこいつに僕は頭を抱える。避けようにも席が前後なわけで、教室で叫ばられるよりマシだ。はあ、と僕はヘッドホンに流れる音楽を大きくした。



教室に入れば、生徒たちが緩くグループを作り話している。誰これ構わず挨拶をしてくる、割とフレンドリーなクラスメイトに軽く返事を返せば、後ろにいたそいつにも彼は挨拶をする。

「おはよーさん」
「おはよおはよおはよ!」

笑ってそういう彼女はとても幼く見えた。チビというのもあるだろうが。

「月島ズは今日も仲良しだな!」

そう。こいつが教室で「親友になろ」発言をしてから、僕とこいつは一括りにされるわけだ。ほんと冗談じゃない。
ほたるくんほたるくんとやってくる彼女に、なんとかけいくんと直したのはいいが、どうやらそれが悪かったらしい。よくわからないクラスメイト達の脳内にはこいつがいる=僕がいる、なんていう方程式が成り立っているらしい。ほんと、なんで名前なんかにムキになったんだ僕。

「ねえ蛍くん蛍くん」
「…なに」

席についた僕に後ろの席から、ねえねえと声をかけてくる。

「数学みーせて!」

ふざけんな。呆れたような視線を送り、シカトすれば「うえっ、蛍くんひどいよ!親友じゃん」とそう喚く。

「ツッキーおはよー!名前ちゃんもおはよう!」

教室に入ってきた山口が僕に挨拶をして、そしてそいつにも挨拶をする。山口とそいつは何故だか仲がいい。理解できないし理解しようとも思わないけど。

「ねえグッチー!蛍くん数学見せてくんない!」
「え、俺の見る?」

そうやって数学のノートを出す山口は律儀で、馬鹿だと思う。

「わーい!グッチーやっさしー!」

飛びつくこいつは山口以上の本当の馬鹿なのだろうし、テスト前に自分が困ることがわからないのだろうか。
カッとこちらを振り返るそいつ。

「グッチーの方が親友っぽいじゃん!どうするの蛍くん!」

しるか。


友達未満と親友
(頭が弱すぎる)
katharsis