お礼なんていってやらない
この間、青葉城西の及川サンとかいう王様の上司(日向のいう大王様(嘲笑))に僕の隠してきた弱点、レシーブを見抜かれた。まあいつかは知られるだろうとは思っていたけれど。
「ちっ」
舌打ちが多くなって、どうも最近イライラする。ツッキーと叫ぶ山口も最近は僕に話しかけない。話しかけないというか、話しかけ方を迷っているのか。
とにかく小学校から僕を知っている山口はこんな時、僕に下手に話しかけるとマズイということを知っている。
そう、知っているから話しかけ方を迷っているんだ。それなのにこいつらときたら…。
「月島くんちょっといい?」
いいわけない。
部活に行こうとした僕にかけられた声はクラスメイトの黒髪の勝気な女子のもの。返事をする前に、彼女は僕の前に立つ。その後ろに隠れるように立つのは、長い茶色のふわふわとした髪の女子。隣のクラスで見たことがあった気もするが、正直興味もないのでわからない。
おどおどとした茶色い髪の女子を話しかけてきた方が僕の方に押し出す。
面倒くさい…
なんとなく告白されるのだろうというのはわかった。身長が高い僕は何故かそういう対象になりやすいから。これが初めてではない。けれどいつも特別それを嬉しいと思ったことはかった。むしろ迷惑だ。そして今の僕は虫の居所が悪い。
「あ、あのっこれ」
差し出す薄ピンクの手紙。予想通りのそれに、口から出そうになるため息。ため息を飲み込んでから、別に猫を被らなくていいかと思う。それでこれが無くなって静かになるなら、それはそれでいい。
あのさあ、
口を開こうとした僕をさえぎったのはあいつだった。
「蛍くん!部活はじまるよー!」
「もー!なにしてるの!」と最近部活に入り浸り、マネージャーのような仕事を押し付けられ始めたそいつは、そういって僕の背中を押し体育館へ向かう。僕はそれに抗うことなく、手紙を差し出す女子を置き去りにその場を去った。
「そういえば、蛍くんさっきの子達とお話ししてたの?」
「…別に」
完全に女子生徒が見えなくなって、そいつは思いついたように問いかけてきた。適当に返事をして歩幅を大きくする。ふうんと頷くそいつを放置して、僕は部活へ向かった。
猫被りと無自覚
(助かったなんて思ってない)