やっぱりウザイ。
耳から聞こえる音楽をBGMにいつも通り学校に向かう。玄関に入れば聞こえる大きな声は入学してすぐの頃のように戻った。

「おはよー!!!」

うるさい。はじめに思うのはそれ。少しくらい自重するようになるかと思えば、尚更声が大きくなった気もする。
はあ、とため息をつきながら「おはよ」と返せばきょとんとする名前の顔。

「蛍くんが返事した…」

返事なんて今までだってしていただろうに目を輝かせるそいつにまたため息をつきそうになる。

「返事くらい今までだってしてたでしょ」
「ううん!少なくとも私が叫んだらしてくれなかったもん!」

叫ぶという自覚はあったらしい。
隣を歩く彼女に歩幅を合わせることはない。それでも彼女はちょこまかと僕の隣を歩くために歩数を多くする。僕の隣にいれるのは此奴ぐらいだろうな、と思う。
「でねー」と話すそいつを見る。コロコロと表情を変えて話を続けるそいつの姿。やっぱりこいつはこうじゃなくちゃ調子が狂う。

「ねえ!聞いてるの!蛍くん!」
「はいはい」
「ほんとー?」
「ほんとだって」

そっか、とまた話を続ける名前。
面倒くさいしうざいとも思うけど、この声が聞こえなくなったら少しだけ静かすぎるかななんて思っている辺り、僕ももうダメかな。

「そうだ蛍くん!」
「ん?」
「宿題みせて!!」

ばしっと思わず手が出る。うぎゃ、と女の子らしくない声を上げてこいつは頭を押さえる。

「蛍くん暴力反対だよ!!」
「ったくほんとに名前は…」
「…え」

目を丸くする名前。そういえば名前を呼ぶのは初めてだったかな。
僕はそんな彼女の腕をつかみ、立たせる。

「ほら、早くしなよ。遅れるよ」

嬉しそうに笑いながら頷く名前。隣を歩きながら僕に彼女は言う。

「蛍くん宿題!!」
「やっぱりウザイね」
「え!そんな!!」


蛍くんと名前
(緩む頬を僕は知らない)


best friend? end.140301

katharsis