才能のない私の気持ち
天賦の才。才能の塊。天才。
彼がそう呼ばれるのを私は小さい頃から聞いてきた。バレーを始めたのは一緒だったのに。どうしてだろう。実力は見る影もないほど開いていった。

私は凡人。
彼は天才。

私は、醜い感情をいつも彼に向けていた。



「名前、おはよう!」

そういって笑顔になる彼を私は無視した。初めは不思議そうにしていた彼が段々私に挨拶しなくなっていくことに気付きながら、私は彼を無視し続けた。
そして中学。私達は一切会話をしなくなった。

彼は当たり前のようにバレー部に入部した。その天才ぶりはもちろん健在で、先輩方から目をかけられているようだった。
私はと言えば、未練がましくバレーを続けていて。女子バレー部に入部。初心者ばかりの周り。上手いね、と先輩や顧問に褒められても私の頭に残っているのは彼のフォーム。彼のトス。

週二で男子バレーと一緒の体育館になったため、必然的に彼を見かけた。相変わらずのきれいなフォーム、そしてトスの正確さはさらに上がっていて。

私はやっぱり凡人だった。

痛感するその才能の差。練習しても彼のように上手くはなれなくて。彼の正確で打ちやすいあのトスは出せなくて。
涙が出そうになる自分に嫌気がさす。弱い自分に。練習しても練習しても。私は弱いままだ。



キミにはわからない
(才能のない私の気持ちなんて)

katharsis