俺がどれだけ君を
ガキの頃から親同士の仲がよかった。幼稚園も小学校も一緒だった。もちろんケンカもしたし、泣かせもした。だけどそれ以上に俺とアイツは仲がよかった。
だから、バレーを始めるのも練習をするのもいつも一緒で。

「セッター!トスがびゅーんって!かっこいい!」

そう言ったのはどっちだっただろう。俺もアイツも、二人ともセッターを目指した。
俺もアイツも才能があると言われた。だけど俺はいつもアイツの凄さを見ていた。飲み込みの早さ。センスの良さ。正直嫉妬した。だけどアイツの才能に傲らず、ストイックに努力するその姿勢に俺は憧れた。
俺が周りから才能があると言われても、足りないと思うのはひとえにアイツがいたからだろう。
俺とアイツは永遠にライバルで、親友だ。本気で俺はそう思っていた。

それなのに。

いつからだろう。挨拶をしても、彼女が返してくれなくなったのは。教科書を借りようとしても、無視されるようになったのは。練習相手として組まなくなったのは。

アイツに嫌われたくなかった幼い俺は、同じような態度をとることしかできなくて。俺とアイツの溝は年々大きくなった。原因はわからなかった。

中学に入って、当たり前のように俺はバレーを続けた。彼女がバレーをやめるなんて思ってはいなかったが、体育館で女子バレー部が練習している中に彼女がいることに酷く安心した。

週二で見かける彼女のトスは、相変わらず鋭く。そして可憐だった。ボールがスパイカーの手に吸い込まれるようなそのトスに、嬉しくなると同時に酷く悔しくなった。俺はまだまだ、彼女に追い付けない。そう思った。

俺とアイツは一年にしてユニフォームを手にした。嬉しかったが、三年の及川さんに比べても俺はまだまだで。正直、そう素直に喜べそうにはなかった。

俺はもっと練習して強くなりたい。そうすれば、きっと名前ともガキの頃のように笑えるんじゃないかと思うんだ。



君にはわからない
(俺がどれだけ君を思っているか)

katharsis