勝利を喜べない私の醜さ
トーナメントは、一つまた一つと勝ち上がる度に厳しさを増していった。
準決勝。
そこで私達は優勝候補の一校にぶつかった。相手の強烈なサービスに後輩のレシーブが乱れる。相手の見事なコンビネーションに同級生のブロックが甘くなる。トスで強引に纏めるも、私達のバレーは綻び続けていく。

「す、すみません!」
「大丈夫大丈夫!次々!」

そう叫びながらも、開いていく点数に焦りを覚える。私がしっかりしなくちゃいけないのに。
そんな中、頭を過るのは彼のトス。彼のトスならあのブロックを置き去りにできたのに。くそ、と内心呟けば、相手のアタックをリベロが取り損ねる。

「ごめん!」
「次いくよ!気持ち入れ替えて!」

大丈夫。まだいける。私は負けない。負けるわけにはいかないんだ。

 ∬

終わってみれば、23-25、18-25のストレート負け。「私がもっと取れてれば!」「私狙われて!もっと、しっかりレシーブできていたら!」たら、れば、と泣きながら謝るチームメイトを見ながら「私も甘かった。だから泣かないで」と言葉を発す。涙は出なかった。我慢していたわけでもない。ただ、涙は流れたかった。

「この試合で3年は引退だ。苗字を中心とした良いチームだった」

つらつらと述べられる監督のその言葉は耳には入ってこなかった。私はただ、ひたすらに自分の実力不足を痛感していた。

「苗字こい」

チームメイトが泣き止み、片付けを始めている中、監督に呼ばれた。また男子を見に行くのかと思えばそれは見当違いだった。

「よくやった」

褒められたことに疑問を抱く。

「お前の目標が優勝だったことは分かっているが、それでもベスト4だ」
「…」
「お前は自分を責めるな。お前はよくやった」

その言葉を私は鵜呑みにできなかった。

「違います。私は、無力でした。私がもっと上手ければ…っ影山みたいに!うまかったら!」

勝てていたかもしれないのに…、そう言った私に監督は、眉間のシワを深くする。

「次の男子の決勝、見にこい」

監督はそう言うと、私をその場に残して去って行ってしまう。その言葉に疑問を抱きながら、そして絶望を感じながら私はチームメイトの片付けに加わった。


キミにはわからない
(男子の勝利を喜べない私の醜さ)
katharsis