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 ああでもないこうでもないと意見を出し合う内に空では紫懸かった雲が筆で佩かれたようにたなびき、茜と縹が混ざり合う。微かに存在を主張する星を一瞥し、彼らは数多の痕跡で若干彩度が落ち、黒が目立ってきた地図を畳む。
 柱間は地図を仕舞いながら、向かいでシャーペンを仕舞っているマダラに問いかける。
「ちょっと寄りたい所があるんだがの、寄ってもよいか?」
 マダラは好きにしろ、とぶっきらぼうに呟きさっさと荷物をまとめて立ち上がる。柱間も莞爾と笑みながら続いて立ち上がり、年季の入った縁側が呻き声を上げる。二人はそのまま廊下を進み、表へと出た。
 元来た方向とは逆の、また森へ続く方角へと足を踏み出す。幼子が無邪気に駆け、その子の親が息を切らしながら走るのを尻目に、彼らは雑踏の中を歩く。
 思い出した頃にやってくるじめりとした暑さ。薄い膜が貼り付くような不快さ。マダラと柱間はうんざりとした声を出した。
「……暑いな」
「……暑いぞ」
 太陽光は容赦なく降り注ぎ二人の肌を刺していく。そのうちに汗が彼らの額を滑り落ちる。二人が地面にシミを作りながら歩みを進めていくと、こぢんまりとした甘味処が見えてきた。
「こりゃまた随分と趣のある……」
「ここぞ」
 柱間が扉を勢いよく横にスライドさせると、中から冷気があふれ出して熱気を押しやった。二人は汗を撫でるその冷気の気持ちよさにほっとしたような顔をしながら、案内された奥の席に腰掛ける。
 席に近づいてきた店員は、木製の盆に乗ったコップとお手拭きを二つ机の上に置いた。ことり、とコップが机にノックした。
「お冷やです」
「どうもぞ」
「どうも」
 柱間とマダラは軽く会釈をする。透明な水が光を飲み込み机に反射して、部分的な海を作り上げ、冷涼な雰囲気を放った。
店員が去って行くと、二人はそろって脱力する。
 柱間は机に伸びながら、吐く息のままに気の抜けた声を出した。
「あー涼しいぞー」
 向かいに座ったマダラは机に肘をつき両手を組んで額をそれの上に乗せた。頭分の重さが組んだ手を下へと押しやる。
「……」
 はー……と二人そろって詰めていた息を吐く。力が抜けた姿勢のままに、そこだけ時が止まったかのように彼らは微動だにせずただ沈黙だけが降りていた。冷気が熱を浚っていく中、先に動いたのはマダラであった。
 彼は気怠げに柱間の方に視線だけを寄越す。
「柱間、何でここに来たかったんだ?」
 柱間は伸びた体勢のまま顔だけをあげて、不活発な様子で間延びした声を出した。
「ここの抹茶パフェが食いたくてのー」
「抹茶パフェだぁ?」