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彼は眉根を寄せ口をへの字の形にした。そのうんざりとした様子にマダラは憐憫を含ませた目線を送る。
「やっぱり千手にもいんのか」
「扉間が胃薬を探し回っているのを見たことがある」
柱間は、兄者、ここに置いておいた胃薬を知らないか、と当時隈と友達になりかけていた弟の少しやつれた顔を思い出す。停戦協定が結ばれてからの同盟への準備に奔走した日々。族長だった柱間は勿論、その右腕として辣腕を奮っていた扉間も関係各所との調整など寝る暇も無いほどに忙しなく動いていた。
マダラは自身も経験したソレに扉間を哀れに思い心の中で手を合わせた。
「胃薬を切らしてたのか」
「おそらく」
「どんだけ服用してたんだよ」
柱間は顎に手を当てながら唸る。側には胃薬が常にあったような。
「結構してたぞ」
「マジかよ……」
マダラの口が引き攣る。柱間は飛来した雀を見つめていた。彼らは静心なく動き回っていた。
***
柱間は縁側で大きな紙を広げていた。火、風、水、雷、岩の忍五大国を始めとした大陸の各国の主要都市や主要スポット、街道が描かれた鮮やかな地図が目を刺す。マダラは興味深そうにそれを覗き込み、柱間は人差し指で火の国から少し離れた地点を指さす。
「今オレたちはここにいる」
柱間はつい、と指を滑らせ、街道をなぞった。その指は一点ではっとしたように静止する。そこは水色で緑を分断するように蛇行した線が描かれた場所であった。
「ここを経由して草の……あれ、ここ水切りした川ぞ」
なつかしいのー、と柱間はどこか嬉しそうな声を出した。どこかで鹿威しの軽い音が反響する。マダラが手持ち無沙汰に足で蹴った小石は、数回跳ねて他の石にぶつかり小気味良い音を奏でる。彼はいたずらを思いついた少年のような楽しげな顔をした。
「……試験前に言ったことだがな」
柱間は地図から目を離し、マダラを不思議そうに見遣る。
「どれぞ?」
「川に行くか、と」
「ああ、あれぞ!」
柱間は合点がいったように大きく頷く。彼の黒髪が楽しげに跳ねた。マダラは口角を更に上げる。
「ここで久しぶりに水切りをするのもいいと思わねぇか」
「名案だの! オレも提案しようとしたところぞ!」
ならそこを経由してうちはの里に先に行くか、と二人は旅程を修正していく。ここを通ると近道だ、とマダラの指が里と川を結んだ。ならば、と柱間も川への近道を地図上に示す。うちはの里からも千手の里からも、その川に至る距離は忍とは言え少年の足で行ける範囲。二人の間には快然たる空気が流れていた。