無差別殺人を行い逃走中だった犯人が無事逮捕されました。
というニュースが視線の先で流れている。
捕まって当たり前。危険な人物なんだから逮捕されてよかった。世の中の誰もが思っていること。

そう考えるのは見知らぬ殺人犯だからだろうか。彼が捕まったらどうなる?
世の中、いや、少なくともこの小さな八十稲羽の住民は安堵するだろう。
私は家から出ようなんて考えなくなる。引きこもり生活のスタートだ。
なんて私が1人頭を悩ませている間、彼は呑気に冷蔵庫からビールを取り出そうとしている。

「うわっ、どうしたの?」

無意識に体が動き出し思わず彼を抱きしめていた。どうすることもなく、ただただ彼の、足立透という男の存在を自分自身の体に刻み込むように強く強く。

「...足立さん。」
「なーに?」
「ずっと一緒にいてください。」

彼の顔を見上げると、ビールをひとくち飲み小さく笑っていた。
こっちは真剣なんですよ、これでも。

「なにそれ、僕がどこかに消えちゃうとでも思ってるの?」
「少し...足立さんが突然いなくなったらどうしよう...って、」
「もー、しょうがないんだから名前は...。」

不意に顎に手を添えられ少し強引にキスをされた。
口の中いっぱいに広がる苦味は、彼が飲んでいたアルコールの味だろう。

「心配しないでいいから。ね?」

彼は笑う。
この言葉も、表情も彼なりの優しさだろう。
しっかりと彼の存在、体温を自分自身の体に感じたはずなのに虚しさだけが私の心に残り続けた。



何日も
何年も