兄弟喧嘩(仮)


いつもと変わらない見慣れた部屋
テレビにテーブル、1人用のベッド。とにかく物が少ないこの場所はもちろん足立さんのお宅。
そして今ここに足立さんと私の3人で過ごしているわけだけれど...え、2人じゃないのかって?
だってほら、テレビを見ている足立さんと、私を背後から抱きしめ私の髪に指を通してはキスを落としている足立さんことシャだちさん。
3人いるでしょ?

シャだちさんが背後からがっしりと私を抱きしめているため身動きがとれない。
私自身は問題ないのだけれど、この状況が続くと恐らくあっちの足立さんが怒りだしそうな予感がする。

「そろそろそれやめたら?君。あと、名前も少しは嫌がりなよ。」

ほら。

「嫌って...私はとくに嫌じゃなかったというか...慣れ、ですね...。」
「名前はお前より僕を取った。そういうことでしょ?」

背後から自信満々に言うシャだちさん。
誰もそんなことは言っていない。勝手にそんなことを言われると話が混乱するので是非やめていただきたい。

「名前、それ本当?僕よりこんな奴のほうが好きなの??聞いてない。」
「でも、僕が髪いじろうがキスしようが嫌じゃなかったってことは僕が好きってことでしょ。」

間違ってはいないけどそうではない。

「あの、」
「名前がお前のこと好きなわけないでしょ?自分の想いも伝えられないような男を名前が好きになるとは思わないけど?」
「だったら言わせてもらうけど、名前が君みたいな行動そのものが下心丸出しな男好きになるとか絶対ないから!」

せめて話を聞いてほしい。
そして2人が言い合っているその言葉は結局自分自信に返ってくるとわかっているのだろうか...。
俺がお前でお前が俺でなんですよ。

「だったら名前に決めてもらおうか?どっちの足立透が好きなのか。って、」

でた、地獄の質問。

「あの、」
「選ぶのは僕、だよね?」
「違う!絶対僕だから!」

お願いだから話を聞いてください...。

「こんな何もかも強引なあいつより名前にだけは優しい僕のほうが好きだよね?」
「名前は少し強引なほうが好きなんだよ。だから、手も出してこないこんなやつより僕のほうがいいよねぇ?」
「...。」

言葉がでない。私に選ぶ権利を与えておいてそれですか?
1つも返事をさせないなんて何を考えているんだこの2人は。

「そもそも名前と最初に会ったのは僕なんだから僕が選ばれて当然でしょ?」
「お前が最初に会ったってことは僕も会ったってことでしょ。何言ってんの?」
「あの!!!!!!!」

頭にきたから叫んでみれば2人して勢いよく私を見た。足立さんの驚いた顔を見るのはひさしぶりだ。

「さっきから勝手に話進めてますよね?少しは話聞いてもらえますか?私には発言権もないんですか?」
「...名前?」
「落ち着いて、大丈夫?」

大丈夫なわけがない。こんなにも振り回されて落ち着いていられるか。

「まず足立さん。あなた本体ですよね?本体なら本体らしく胸張ってもらっていいですか?さっきから聞いてれば自分のシャドウに好き放題言われすぎ。そしてシャだちさん。あなたは好き放題やりすぎなんですよ。それに私は別に強引な男が好きとか言ってないんで、好き勝手言わないでください。私を取り合うみたいな...そういうのしないでください...子供じゃないんだから。」

多少は効果があったのか2人は黙ってしまった。

「どっちを選ぶとか私にはできないんですよ。2人は嫌かもしれませんけど...。」
「だったら毎日僕とこいつ、交互に相手するのは?」
「あー、それいいかも。」

待て、話が変わりすぎじゃないか?取り合うなと言ったそばからなんだそれは...。

「そういうことじゃないです!放し逸れてませんか?」
「「取り合わなければいいんでしょ?」」

2人の言葉を聞いて深くため息をついてしまった。なぜこういうタイミングだけ息ぴったりなんだろう。



兄弟喧嘩(仮)