それはまた今度。
「足立さーん、足立さ...ん?」
何回呼んでも返事がない。不思議に思い足立さんを見てみればカーペットで眠っている。
...カーペットとはいえ、そんなところで寝ていたら風邪をひいてしまう。
どうにか移動させたいけれど成人、年上、細身とはいえ男性。
年下の私1人で移動させられるとは思えない。
「足立さん。こんなところで寝たら風邪ひきますよ。」
頼むから起きてほしい。足立さんは警察官なんだから、風邪をひいていいわけがない。
「足立さん。ここじゃいくらなんでも...」
こんなに声をかけても起きないということは、相当熟睡しているんだと思う。
日頃の疲れが出ている証拠かもしれない。
そんな足立さんを強引に起こしてしまっていいものか...。
まったく起きそうにない足立さんをため息交じりに眺めていたら、
前髪と前髪のわずかな隙間からおでこが見えていることに気が付いた。
人間って自分の体に異変を感じたら起きる...はず。
「起きない足立さんが悪いんですよ。私は何回も声かけましたからね。」
なんてひとりごとを吐き、おでこへ顔を近づけた。
一瞬我に返り私は何をやっているんだと思ってしまったけれど、ここで冷静になってしまったら私の負け。
私は何も悪くない。カーペットの上で寝ている足立さんのせい。全部足立さんのせいなんだ。
目を閉じおでこに唇を寄せゆっくりと口づけた。こんなやりかたでよかったのだろうか...。
よくよく考えてみれば、こんなやりかたで起きるとは思えない。
作戦を練り直さなければ。と考えたそのときだった。
「へぇー。名前もそういうことするんだ。」
「え!?」
「めずらしいじゃん。名前からそんなことしてくれるなんて。」
ペラペラと話す口ぶりに今起きました。という表情ではないことから、寝たフリをしていたんだと確信した。
...騙された。
「最低。嘘つき。でこっぱち。」
「でこっぱちって...。でも僕は、」
足立さんが態勢を変え、ずいっと私の元へとやってきた。
お互いの鼻がぶつかりそうなくらいに近い距離。
「こっちがよかったんだけど。」
私の下唇を人差し指でなぞりながら足立さんがそう言った。
本当にずるい。私が何をしようとしても足立さんのペースになってしまう。
「また今度、頑張ります。」
なんて言ってみたど、
無理、かも...。