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とあるドアの前。おそらくこのドアの向こうにはスバルがいる。
あの住所に間違いがなければの話だけど。

インターホンを鳴らし、奥から聞こえてくる足音に胸が躍る。
がちゃりと音が鳴りドアが開けば、中からよく知った可愛らしい姿がそこにはあった。
部屋着に変装の為のマスク。どんなに姿を隠してもスバルだ。
今目の前にいるのは紛れもなくあの桐谷スバルなんだ。

「えっと...どちらさま...ですか?」
「あー、僕?こういう者なんだけど。」

警察手帳をチラつかせれば少し驚いたのかスバルの目つきが変わった。大丈夫だって、スバルは何もしてないから。
僕がこうなったのは...君の大好きな彼のせいだけど。

「あの、えっと...警察の方が何か...?」
「あのさぁ、君、彼氏いるよね?桐谷スバルちゃん?」

僕が名前を呼んだ瞬間、スバルは身の危険を感じたのかドアを引いた。
その瞬間に足を入れ、隙間に手を入れ強引に開ければ僕の勝ち。

「外寒いから入れてもらうね?中のほうが話しやすいでしょ?他人に聞かれないもんねぇ。
どうせ今だけの生意気な彼氏がいるなんて知られたら困っちゃうもんね?」
「悠くんの悪口言わないで」
「あー、やっぱり鳴上悠なんだ。気づいてないかもしれないけど僕まだ"彼氏"としか言ってないからね?でも、教えてくれてありがと。」

しまったとでも言うように目を見開きスバルはがくんとその場に座り込んでしまった。その表情がだんだんと崩れていく。
目に涙を浮かべ怯えた表情で僕を見上げるスバルはどうやら腰を抜かしてしまったらしく立ち上がることができないようだ。

「これ邪魔じゃない?もう僕わかってるし着けててもムダだって。」

彼女の顔を隠していたマスクを優しく外せば、帰って...。とスバルは小さく囁いた。
まだスバルの部屋にも行ってないのにノコノコ帰れるわけないじゃない。

「部屋見てもいいよね?」
「ま、待って...!」

僕の右足にしがみつきスバルが必死に抵抗する。こんなのドラマのワンシーンでしか見たことないよ?愛した男に裏切られた女ってかんじ?

愛する女に裏切られたのは僕なんだけど。

目の前に広がるスバル部屋。
部屋中にガキとの写真が丁寧に飾られているのが目に入る。

「どうして警察の人がこんなことするんですか...。私、あなたに何かしましたか...?」

何かしましたか。か、
あーあ、君自覚ないんだ。
ファンって大切にしたほうがいいよ?
あれ、おかしいなー。
大切なファンが元気になれるようにってアレやってるんじゃないの?

「僕ね君のファンなんだよ。結構前から。大好きなんだ。愛してるよ?なのに平気で彼氏作っちゃって...。
ファンに気づかれてないとでも思ってた?...とは言っても気づいたの最近だけど。」
「それと何の関係があるんですか?私はあなたに何もしてません!」
「何もしてない?あはは、笑わせないでよ。君は僕を傷つけた。だから直接言いたかったんだって。僕は君を愛してるよ?あのガキより何倍も。」

あー、ちょっとやりすぎた?
スバルを泣かせたいわけじゃないんだけど...。
これくらいにしといたほうがいいかも。
これ以上行ったらスバルが泣いちゃうからね。

「ごーめん!スバルを泣かせたいわけじゃないんだって!ただあの俳優より僕を愛してくれないかな〜?って思っただけだから!」
「帰って、お願いだから、帰ってください...。」
「帰るって。あとでまた来るけど。じゃ、バイバイすばるん!」


あ、連絡先聞くの忘れた。
まーいいか。どうせまた行くし。