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あれから数日。やっぱり桐谷スバルというアイドルは心が強いと実感した。
僕にあそこまでされても普段と同じ立ち振舞いで生放送の歌番組に出ているのだから。

「なのにあんなガキと付き合っちゃうんだもんねぇ...。」

手を伸ばせば指先が画面に当たる。
画面の向こうにいるスバルの輪郭を、髪を、頬をなぞるように指を動かしても伝わるのは画面の感触だけ。
この前スバルに散々言ったけど手は出さなかったことを褒めてほしいよ...。
この前の感じじゃ今の僕が触ったらスバル絶対泣いちゃうし。

「連絡先聞いてなかった。明日行ってみようかなー...いるか知らないけど。」



外回りという名の息抜き。
息抜きという名のお宅訪問。
スバルに変な男が寄ってたら危ないからおまわりさんがちゃんと見張ってあげなくちゃ。

「...あ」
「ドア開ける時ぐらいちゃんと確認したらどうなの?」

インターホンを押せば何の疑いもなくスバルはドアを開けた。
確認もしなければドアにチェーンもつけていない。
...僕じゃなかったら危なかったんじゃない?

「まだ私に用があるんですか?」
「連絡先教えてほしくてさ〜。いいよね?」

スバルが眉間に皺を寄せムッとした。
そういう不機嫌な表情をしたスバルも可愛い。

「教えてくれたらすぐ帰るって。寒いから入れてもらってもいい?」

この前みたいにまた閉じられちゃうのかと思ったけど、予想外なことにスバルは僕を簡単に入れてくれた。
へー、そういうことしちゃうと勘違いする男がいる。ってこと知っといたほうがいいと思うけど。
ま、僕は違うけどね。

「あなたを許したわけじゃない。騒がれるよりマシだと思ったから入れただけです。連絡先教えるつもりもないし。」

僕騒ぐつもりないんだけど。
それより部屋に入った瞬間、鼻孔をかすめたスバルとは違う人物の香水の匂いに思わず舌打ちをしてしまった。
僕がここへ来る少し前までいたんだろうね"彼"が。

「よく彼が帰ったあとに僕のこと入れられるね。気がつかないとでも思った?」
「そんなこと言われても...勝手に来たのはあなたですよ?」

今日ほどここに来なければよかったと思う日はない。
スバルの部屋に足を踏み入れ目の前に広がった光景にまた舌打ちをしてしまった。
僕にもわからないけどきっとさっきより音は大きかったと思う。

生々しくグシャグシャになった布団。
それにあのガキの香水。
あー、これはあれだね。愛し合った後ってやつ?若気の至り?

「相当ラブラブみたいだねぇ。」
「あなたには関係ありません。」

愛するスバルがあのクソガキとそういうことをしていたなんて今年1番の最悪な事実だ。これ以上の最悪なんて存在しない。
でも、そんな僕を一瞬で変える出来事が起こった。

「これスバルの?」
「え、わ、やめてください!」

目の前に置かれていたロック画面が解除されたままのスマートフォンを手に取り、腕を伸ばして頭より高い位置で操作する。
スバルとの身長差は20cmと言ったところだろうか。スバルが必死に腕を伸ばしても僕の手元には届かない。

「ありがと。これで僕の連絡先ちゃんと入ってるから。」
「あだち、とおる、さん...。」
「あれ、もう名前読んでくれるの?嬉しいねー。寂しくなったらいつでも呼んで?困ったときはおまわりさんがいつでも助けてあげるから。それじゃ、また来るよ。すばるん。」


これでいつでもスバルの声が聞けるってことか。
まぁ、スバルが出てくれるならの話だけど。