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「ひさしぶり。なんて言っても覚えてないか。」
「えっと、あの...。」

スバルが事故に巻き込まれたと聞いて病院へ足を運んだ。
仕事以外の記憶は消えている。そう聞いたときは、そんな非現実的なことが本当にあるのだろうかと疑っていた。
部分的な記憶喪失。自分の仕事関係のことは覚えているのに、彼女にとって近い存在だった人物を忘れているらしい。

「俺は俳優の鳴上悠。」
「俳優...ってことは私と同じ芸能関係者ってことですか?」
「正解。あと、俺とスバルは恋人だ。」
「こい、びと...?」

俺は嘘をついた。小さな可能性にかけてみたかった。
スバルが記憶を失ったことでまたやり直せるんじゃないかと思ってしまった自分がいる。
彼女の中にある俺との記憶を新しいパズルとして作り上げるために。

「ごめんなさい。ちょっとまだ、頭の整理がついてなくて...。」
「俺もごめん。突然来ていきなり恋人なんだ。なんて、驚くに決まってる。」
「でも、お仕事似てるしきっとすぐに思い出せると思います!えっと、鳴上くん...?」
「悠でいい。」
「悠くん。もし、悠くんの邪魔にならなければ思い出すお手伝いしてもらえませんか?」

そんなことを頼んだらスバルはもうあの頃の、俺と別れたあとの生活には戻れなくなる。
それでもいいのか?
なんて、スバルにはわからないことなんだろうけど、俺からすれば最大のチャンスでしかなかったんだ。

「もちろん。」
「よかったー。1人じゃ思い出せる気がしてなかったから...心強い。」
「また来るから、そのときに今までのことゆっくり話す。」

記憶を失っているとはいってもスバルであることに変わりはない。
1人の人間としての桐谷スバルが俺の前で笑っている。
どれくらいぶりだろう、こんなにも楽しそうに笑うスバルを見たのは。



君の愛しかた。
もう間違わないって決めたんだ。