心地
宮田司郎は頭を抱えていた。
あるはずの白衣が見当たらない。確実に置いた場所にも見当たらない。と、
しかし宮田は気づいてしまった。
視界の中にカーテンが閉めきられたベッドがあること、その中で眠っている人物の存在にも。
「名前さん起きてく、だ...」
彼女を起こそうとカーテンを開けた宮田の目に飛び込んできた光景は彼の予想をはるかに越えていた。
まさか彼女が宮田の白衣にしっかりと両腕を通し眠っているとは思わなかったのだから。
そんな彼女を叩き起こし白衣を返してもらおうかと考えてみたものの、彼女は一応ここの患者であると考えたらその手を使うわけにはいかなかった。
むしろ、使った時点で彼女から私は患者である。としつこく言われることだろう。
「名前さん。」
「...終わりまで寝ていいって言ったの先生ですよ。」
「起きていたなら目ぐらい開けてください。」
「先生がカーテン開けた音で起きました。でも、寝るんです。」
「わかりましたから白衣だけ返してください。」
「白衣...?」
宮田の言葉を聞き名前は目を開く。そして宮田と目を合わせた。
彼女の視界には白衣を羽織っていない宮田の姿。ゆっくりと視線を自身の腕に移せば、本来宮田が羽織っている白衣が彼女の腕にしっかりと通されてる。
その状況を理解したのか、彼女は目を見開き素早く白衣を脱ぎ投げ捨てるように宮田へと渡した。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」
「どうしてこれを着ていたんですか?」
「あ、いや...」
「どうして、着ていたんですか。」
彼女と視線を合わせた宮田の目は冷たく鋭い。一方の名前は蛇に睨まれた蛙といったところだろう。
「お、おやすみなさい!!!」
名前は自分のテリトリーから宮田を追い出し、カーテンを閉め切り布団へと深く潜り込む。
その光景に宮田は深くため息を吐いたものの、本来の目的であった白衣を回収することができた為仕事へと戻っていった。
扉の閉まる音を確認した名前は起き上がりため息をひとつ。
「見つけたから羽織ってみたら着心地良くてそのまま寝てしまった。なんて言えるわけないですよ...。」
おかげでいい夢が見られました。
なんて、なおさら言えるわけがない。