その症状の名は?


ここは夜の宮田医院

「...」
「先生お疲れですか?」

診察室の隅で勉強をしていた彼女こと苗字名前が俺と視線を合わせた。
なぜ彼女がこの診察室で勉強をしているのか、簡単な話。ここなら涼しいからという理由だ。
家族がいない彼女から、節約の力になってほしい。と頼み込まれ断ることもできぬまま夜だけ診察室の隅を貸した。というわけだ。

「1人で村の全員診てると同じですし、そりゃ疲れますよ。」

毎日こんな遅くまでお仕事してるんですから。と彼女は続ける。
そっくりそのまま返しましょうか。と言ってやりたいところだ。
毎日こんな遅くまで勉強している彼女も同じだろう。

「先生の疲れが取れますように。...あ、」

彼女は窓から夜空を眺めながらそう言った。と思えば、ハッとした表情で俺を見る。
今の聞こえましたか?と聞いてくるから無言で頷くと目線をそらされた。

「流れ星でも出てましたか?」
「い、いえ、まったく...。普通の空です。」
「名前さんも願い事とかするタイプだったとは...。」

普段どちらかといえば静かな表情の彼女がごくまれに焦った表情を見せるタイミングがある。
その表情を知っているのは俺だけだと勝手に思っているが...
いや、俺だけだろう。

「ふ、普段はしませんよ?偶然です。先生が休めたらいいなーと思っただけですから。」
「...本当ですか?」
「本当です。」

彼女がいつもの表情に戻るのも早く、手元のノートへと視線を移してしまった。



その頬が紅く染まっている理由は?
風邪とはまた別の症状らしいですね。