05




「覚えてる?」
「……え?」
「僕達が5年生の時、フレッドが悪戯を仕掛けようとして、君に吹っ飛ばされたこと。」
「忘れないよ…あれは。」



クスクス笑いながら話すジョージに、苦虫を噛んだような顔をする私。



あれは確か、フィルチを狙った何かが、偶然私の方に飛んできて、それを跳ねかけしてフレッドにぶつけたんだ。


まさかいきなりのことで何が起こったのか分からなくて、呆然伸していると、廊下の壁により掛かって爆笑してるジョージがいて、それを見てなんとなく理解できてきて、その後は数日にわたってフレッドに嫌みを言われ続けたんだ。


まぁ私も言い返したから、周りから見れば喧嘩に見えていたんだと思う。



だけど、悪戯グッズの薬品の調合をアドバイスしたら、すっきり仲直りできた。



今考えてみると、私もフレッドも単純で、難しい事なんてぜんぜん考えてなくて、純粋だったんだなって思う。


思い出し笑いをしていた私の頬を、スッと冷たい風が通りすぎてゆく。


「その時から、僕らは何か変わった?」
「…変わったよ。
2人とも大人になった。」

ジョージの言葉にぽつりと呟くように返事をする。



そうだ。
私たちはあれからいろいろな経験をして、変わったんだ。身体も心も、あのときとは違う。



「でも、変わらないものだって存在するはずなんだ。」
「え?」



……変わらないもの…?


隣にいたジョージが向きを変えて、私と向き合うように立った。

数十センチ先には、ジョージがいる。


ドキドキとうるさくなり始める心臓を、抑えながら彼を見上げた。


「気持ちは変わらないよ。
少なくとも僕は。」


複雑そうな表情をして、眉をハの字に下げるジョージを見上げながら、フと思ってしまったんだ。


やっぱり愛おしい、と。
笑顔が一番好き。

だけど、泣いた顔も困った顔も、怒った顔も、全て好きなんだ、と。

知らないフリをしてきた心が、一気にあふれ出す。


「もし僕だけではないのなら…。」


そう続けたジョージは、眉をひそめ話すのをやめた。


「違うね。
順番が違ってる。」

「え?」

…順、番?
ポカンとしている私に、クスッと微笑んだ彼は、静かに私の両手を握りしめた。


好きです。
君のことが、この世界のなによりも。



「………ぇ?」
「君の心が変わっていないのなら、もう一度やり直させてほしいんだ。」


ギュッと手を握りしめる力が強くなった、私はジョージの手を握ることなく、彼を見上げたまま固まっていた。


……好き?
ジョージが私を?
私がジョージを?


嘘みたいな告白に、頬を伝った温かいもの。それを拭いてくれたのは、大きくてゴツゴツして手で。


私は、いつまでもジョージを見つめていた。


「変わってないよ。」
「……え?」


……そうだよ。
私だってこの数年、変わらずあなたが好きだった。
それは過去になるはずもなく、今でもこんなに心臓がうるさいんだから。




「私だって、変わってはいなかった。
貴方が好きなこと。」



そう言ってヘラリと笑った瞬間、グイッと両手を引っ張られ、そのままジョージの胸へ飛び込むようにして、抱きしめられた。



『わっ!……ジョージ?』


ギューッと彼に密着する体が、今更になってなぜか恥ずかしくて、むちゃくちゃにもがいても、彼の力が弱くなることはなく、それどころか今まで以上に強い力で抱きしめられた。



「ジョ「アリサ?」
「ん?」

「とっても君が好き。
ううん、こんな言葉じゃ足りない。」
「え?」

「愛してる、この世界中の誰よりも」


その言葉を聞いた瞬間、ダムが決壊したようにポロポロと涙が溢れてきた。

ゆっくりと彼の背中に手を回すと、キュッと服を掴んだ。




「くさい」
「知ってる。けど事実だから」



涙のせいで言葉にはならなくて、ただ数回カクカクと頷いた。



愛の言葉を伝えよう。
何回でも、何万回でも、愛してると口にしよう。
(見慣れた景色を共に歩もう。
もう離れることはないのだから。)


mae tsugi


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