「緋色」
「御幸、お疲れー」
「おう。」
「どうだった?模試」
「聞くな、泣きたくなる。」

はぁとため息をついて、肩を落とす御幸に苦笑いを浮かべながら歩き出す。


11月になって、ようやく大会も終わり受験勉強も佳境に入った頃。
ちょうどそれは模試の帰りのことだった。
土曜日一日を使った模試は、センター試験を意識したもので、理系の私は午後までかかってしまった。



御幸は、大学に進学するらしい。
それを聞いたのは、夏の大会が終わって、夏休みが明けた頃だった。


「好き勝手やるのは、高校までって決めてたんだ。進学して、親孝行でもしようかな、なんてな。」

ははは。下手くそな笑い方で、うつむく御幸を見つめながら、私は「そうか」としか言えなかった。


「緋色これから暇?」
「うん。」
「ちょっと付き合え」
「え?なんで?」

首をかしげると、少しだけ哀しそうに笑った御幸は、はぁとため息をついた。

「どっか行こうって約束しただろ」
「あー、あー、うわー。
まさか覚えているとは。」
「ったりめーだろ、お前は俺をなんだと」
「野球馬鹿でしょ」
「あったりー」
「…」

やっぱ、馬鹿かよ。

「で、行くのか?」
「うん、行こう」


ニット笑えば、御幸は少しだけ俯いてホッとしたように笑みを漏らすと、肩にかけたスポーツバックを掛け直す。

「」
「どこ行く?」
「えー、お前とならどこでも?」
「要するに?」
「決めてません」
「誘っておいてさー」
「なんだよ。そして、俺の口説き文句はスルーか」
「えー、じゃあバッティングセンター行こうよ」
「聞けよ。
つーか、わざわざ学校でできることを金払ってまでやるー?」
「御幸行きたいことないの?」
「お前とならどこでも」
「じゃー、やっぱバッティングセンターだなー」
「えー、」
「じゃあ、候補をあげろよ」
「……」
「え、ホントにないの?」
「なんつーか、一緒にいれることに舞い上がって、考えてなかった」
「…」
「というか、お前となら何やっても楽しいっつーか…」
「よくもそんな恥ずかしいことを…」
「うわっ、顔真っ赤、ウケる」



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