教育係


「この本…、だいぶ古いですね。」


リュウの部屋を片付けている最中に、机の家に山済みになった本の中に、ひときわ分厚くかつ年季の入った赤茶色の本を見つけた。

その本の角は、擦り切れ表紙は中の型紙が見えている。紙自体も黄色く変色し、ボコボコになっている。
明らかに読み潰したものだ。


その本をリュウに手渡すと、とても懐かしそうにその本を開けると、一枚一枚ゆっくりとめくっていく。


「貰ったんだ」
「…え?」
「この城に来た時、ある人から。」
「…そうなんですか。」



教えてくれはしたけど、その本の表紙を見つめるリュウの目は少し寂しそうで、その人の姿を無意識のうち探しているように、見えた。リュウが見つめている窓の外。もしかしたら、そこにあの人といった人の姿を見ているのかもしれない。


じゃあ、その人を思い出さないために、この本を山の中に置いておいたのかもしれない、なんて思うのは考えすぎだろうか。


「その本をくれた人は、今は?」
「リコリスにいるんだ。
そこで、研究してる。」
「ウェルン、ですか。
…遠い、ですね。」


王宮があるウェスタルから北へ数百キロ。国境の名だたる連邦が連なる山の麓にある小さな町、そこがリコリス。
毎年豪雪に見舞われる町で有名ではあるが、毎年新種の植物が発見されることでも、有名な町である。



「うん。
でも、居場所が分かるだけ今回はマシ。」
「え?」
「あの人、少し前まで世界中を回ってて、どこにいるのかもわからなかったから。」
「そうだったんですか。」



そう本を見つめた呟いたリュウの横顔は、やっぱり少しだけ寂しそうだった。



「会ってみたいなぁ。」
「きっと会えるよ。多分、驚く」
「どうしてですか?」
「僕も初めて会った時、驚いたから。」
「へー、リュウが驚いたなんて、ますます会いたくなりました。
どんな人なんですか?」
「チカイは、なんでも知ってて色々教えてくれた。大人だけど、子供みたいでいつも背中を押してくれた。」
「リュウの、恩人、なんですね。」
「…そうかもしれない。」




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