始動
「暗部抜けたんだって?」
小さい果物ナイフで、スルスルと器用にりんごを向いている手を止め、首をかしげるカカシは、珍しく驚いたように目を丸くした。
「なんで知ってんの?って顔だね」
皿に置かれたりんごを一つかじると、すぐに口の中にりんごの甘みが広がる。
「そりゃ、そうでしょ。
お前は、入院中だし。」
「病院てね、いろんな人が来るんだよ。怪我や病気以外でも、お見舞いとかね。そういう人が持ってくる噂ってすぐ広まるんだから。
病人は暇なのよ。」
「里の機密事項だよ?」
広まるはずがない。とでも言いたげに目を細めたカカシに、観念して小さく肩をあげた。
「風の噂ってやつかな」
「ヒイロ」
「さっきどっかの誰かが話してるのを聞いたの。」
「盗聴?」
「違うわ。」
苦笑の表情を浮かべたカカシは、自分で剥いたりんごを一口かじった。
1人暮らしが長いせいか、綺麗剥かれたうさぎちゃん。
これ、食べるのもったい。
「でもさー、カカシのくせに先生だもんねぇ」
「何よ」
「世も末だなって」
「辛辣すぎる」
ガクッと肩を落とすカカシを見ながら、くすくす笑う。
「で、配属は決まったの?」
「私ねぇ、来年からアカデミーの先生なんだわ」
「は?」
「だからよろしくね、カカシせんせ。」
「どうやって…」
「三代目を口説き落とした。ミナトの力を借りて」
「脅したの間違いなんじゃ…」
「決して違う」
少しだけ、ほんのすこーしミナトの名前を借りただけだし、その他は大体アレヨアレヨと進んで、アカデミーの教師という職に行き着いたのだ。
私としてはとてもラッキー。子供達と一緒にいることができるのだから。
「元暗部がアカデミーねぇ。」
「何よ、なかなかいい案じゃない。」
「一応上忍なんでしょ?」
「え、私上忍試験受けてないよ。」
「は?」
「だから、私中忍。」
いえーい。と言いそうになった口をなんとか引き締め、にっこりと笑ってやれば、カカシはゲンナリしたようにはぁとため息をついた。
これにて一件落着。私の作戦勝ちといえよう。
「時々どこまで読んでたのか怖くなるよ、お前のその先見の明っていうの?」
「えー、なにそれ。
テキトーに生きていれば、なんとかなるよ」
「何なのもう。」
はぁ。とため息をついたカカシは、残りのリンゴを口に放り込んだ。
「」
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